2 (二階堂くん) ページ2
女性を抱えて診察室に入ると、じいちゃんがブラインドを開けているところだった。
俺と女性の顔を交互に見て、じじいはにやける。
「診察台の上ではまずいだろう」
「はぁ?!じじい!何考えてんだ!」
女性を診察台に寝かせて、毛布をかける。
「病院の前で倒れてたんだよ」
「酔っぱらいか?」
「酒の匂いはしないけど」
じいちゃんは突然医者の顔になって、女性に話しかける。
「お嬢ちゃん、名前は?」
女性はしばらく考えて、小さく首を振る。
「え?わかんないの?年は?」
また、首を振る。
「記憶喪失か・・」
じいちゃんは顎に手をやって、しばらく女性の様子を見守る。
「・・あんた、声は出る?」
目に涙をいっぱいに溜めて、彼女は口を開くけど、俺たちに声は届かない。
「記憶喪失に失声症。こりゃかなりのストレスがあったんだろう」
「え?」
「後で警察に連れて行ってやれ」
じいちゃが俺にそう言った時、彼女は俺の白衣をつかんで、何度も首を振った。
「・・・嫌なの?」
頷く女性。
「・・・でも、名前もわかんないのにどうすんの?」
「お嬢ちゃん」
じいちゃんが椅子に座って女性の目の高さに合わせる。
「この家はじじいとバカの二人暮らしだ。男だけしかいないけど、俺はじじいだし、こいつは誠実なバカだから危険はないよ。あんた、しばらくここに住む?野宿するよりマシだろ?」
「じいちゃん!何言って・・・
「見たとこ成人してるみたいだし、問題はないだろ」
「あるよ!」
「まぁ、好きにしな」
じいちゃんはそう言って、診察室を出て行った。
「突拍子のないこと言いやがって」
舌打ちをする俺に向けて、彼女が声のでない口を動かす。
"ここに置いてください"
口の動きは、確かにそう言っている。
「ここにいたいの?」
驚く俺に、女性は大きく頷いた。
「マジかよ」
この日から、じじいとバカと身元不明の女性との、奇妙な同居生活が始まった。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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