1 (二階堂くん) ページ1
「じいちゃん!俺、病院の玄関掃除してくるから!」
じいちゃんの部屋に向かって叫ぶけど、いつも通り返事はない。
俺のじいちゃんは、じじいのくせに早起きが苦手だ。
「けっこう暖かいな」
3月になったとたん、冷たい空気が緩むように感じるのはなぜだろう。
箒を握って、病院の入り口を掃く。
40年前に、じいちゃんが開業した『二階堂こども医院』を、去年から俺が引き継いだ。
俺が医者になりたいと言った時、周りの誰もが笑ったけど、じいちゃんだけは笑わなかった。
死ぬほど勉強して医大に合格した時も、国家試験に合格した時も、研修医の期間が終わった時も、どや顔の俺に、『それがどうした』としか言ってくれなかったけれど。
「よし!」
玄関を綺麗に掃き終えた時、病院の駐車スペースに、ハイヒールが転がっているのが見えた。
「・・・なんだ?」
不審に思って近づいてみると、ハイヒールの横に、スーツ姿の若い女性が倒れていた。
「おい!!」
駆け寄って声を掛けると、女性はうっすら目を開けた。
「大丈夫?」
俺と目が合うと、彼女は怯えたように肩を震わせる。
「・・・あ、大丈夫だよ。不審者じゃないから。つーかここの敷地、俺んちだから!」
女性は、起き上がろうとしてバランスを崩すと、俺の胸の中に倒れこんだ。
「しょうがないなぁ」
裸足の彼女を抱きかかえて、立ち上がる。
「よかったね。倒れたの病院の前で。少し休んでいきなよ」
不安げな目で俺を見つめる彼女と出会ったのは、3月3日の、桃の節句だった。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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