37 (二階堂くん) ページ37
病室に入ると、じいちゃんの隣には、目を赤くした千賀が寄り添ってくれていた。
「・・・千賀」
「・・・・多分・・・もうすぐだ」
「・・うん」
じいちゃんの目線の高さまでかがんで、その青白い顔に触れる。
最初の記憶は何だっけ。
じいちゃんの大きな手かな。
いつの間に、俺の手の方が大きくなったんだろう。
幼稚園の運動会の親子競技、誰よりも張り切ってたよな。
夏休みは俺と一緒に遊び惚けてるから、ばあちゃんにいつも叱られていた。
中学高校の反抗期、俺は目も当てられないくらい荒れていたけど、別にじいちゃんは怒らなかった。
『元気に生きてるだけで100点満点』って、それがじいちゃんの口癖だった。
ねぇ、じいちゃん。
俺、ずっと怖かったんだ。
いつか、この日を迎えなければならないこと。
いつか、一人ぼっちになってしまうということ。
怖くて怖くてたまんなかったんだ。
だけど、違うよ?
俺、一人じゃないみたいだ。
気づけば、俺の両隣に千賀とAが立っていて、ボロボロ涙を流しながら、俺の腕をしっかり握ってくれていた。
「・・・・おい!クソじじい!俺は一人じゃないから!ちゃんと側にいてくれる人がいるから!毎日元気に生きるから・・・だから・・だから・・・だから安心してばあちゃんとこいけよ!!」
寂しくて寂しくてたまらない。
悲しくて悲しくてたまらない。
だけど、ちゃんと見送らなくちゃ。
じいちゃんの家族は俺なんだから。
うっすらと、じいちゃんの瞼が開く。
俺たちをゆっくり見渡して、小さく微笑んだ。
「・・バカ孫、バカボン、バカ娘・・・楽しく、暮らせよ?」
ピースサインを作ろうとした手が、ダランとベッドの外に落ちる。
じいちゃんの全部が停止する。
3人で寄り添って、大声を上げて泣いた。
楽しく、愉快に、面白く。
泣いても笑っても同じ一生なら、笑っていた方がいいような気がする。
憎むより愛する方がいいような気がする。
「ごめんなさい」より「ありがとう」の数が多い方がいいような気がする。
そういうことの一つ一つを、じいちゃんは俺に教えてくれた。
「・・じいちゃん、ありがとう」
かすれてしまったカッコ悪い声。
きっとじいちゃんは『情けないな』って、笑ってくれていると思うんだ。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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