【ut】俺の初恋 (ページ8)

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◎ ページ8

「え、はや」

Aちゃんとの待ち合わせの十五分前、駅前の目印のオブジェクト前。

それぞれ別の方向から歩いて来て出会った俺たちは、互いの顔を見た瞬間、同時に呟いた。

思わず腕時計を確認する。

やっぱりまだ約束した筈の時間までは十五分ある。

顔を上げると、自分と同じように腕時計を確認し終えたらしいAちゃんと目が合った。

「ふ、はははっ」

楽しそうに笑うAちゃんにつられて笑う。

「や、そこは男に花持たしてくれよ」

巫山戯て少し咎めるように言うと、

「それもそうか…善処するよ、」

と笑いを堪えきれないようすでAちゃんが言った。

この感じを見るに次は三十分前に来る必要があるみたいだ。

「甘いね大先生。次は私、四十五分前には来るつもりだから」

まるで心の内を見透かしたような、ささやかな❝次❞を約束する台詞に嬉しくなる。

「舌の根も乾かんうちに何言うとんねん、善処するんとちゃうんか」

つい素でツッコミを入れてしまうのはこれが初めてではなかった。

何故だろう、知れば知るほど惹かれて行く。

それは生まれて初めての、❝恋❞だった。

____やっぱり取り留めのない話をしながら、Aちゃんと俺は彼女の家まで歩いた。

「散らかってるけど」

扉の前ではにかんで笑うAちゃんに

「お邪魔します」

と声を掛けて、俺は恐る恐る足を踏み入れた。