【ut】俺の初恋 (ページ22)

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○ ページ22

時計を見つつ近くの待機場所から集合場所へと動く途中、
ちょうどオブジェの方へ歩いて来るAと出会った。

「ちゃんと時間通り来んのお互い初めてとちゃう」

開口一番、Aはそう言った。

ほんまな、と相槌を打つ俺は相当面の皮が厚い。

「ほな行こか」

Aを促して歩き始める。

彼女と出会ったのは暇だった俺が適当に自分の最寄り駅をぶらついていたときで、

さらにその、というか今立っているこの駅は彼女の最寄りでもある。

つまり、

「徒歩で行けるんや」

「おん。結構近くやで」

先に答えを言われてしまったがまぁそういうことだ。

Aの家が徒歩圏内だと知って俺がどれだけ喜んだことか…

…はまた別の機会に話すとして。

案内しながら平静を装って話しつつ、

いつも通りでその心中を一切読ませてくれないAに、

このままではいけないと思いながらも俺は日和ることを選んだ。

「お邪魔しまーす」

散らかってっけど、そう言って扉を開けると、
Aは脱いだ靴を綺麗に揃えておずおずと家に上がる。

「わ、めっちゃ綺麗」

部屋を見たAが声を弾ませて言った。

丸一日費やして珍しく本気で片付けた苦労が報われてよかった、と思った。