【ut】俺の初恋 (ページ18)

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○ ページ18

「今日も楽しかったなぁ」

しみじみ言うと、

「ほんまに。まさかびしょ濡れなるなんて思わんかったけどな」

と相槌を打つA。

今日一日一緒にいて、Aがこうして関西弁を話すのは本当に俺の前だけだと知った。

それがまた、嬉しくて。

「ハハッ、マジびびったわ＿＿

…Aが濡れるて知らんかったってことに」

「やから一言余計やねん。

あれは知ってて言わへんかった大先生が悪いやろ」

あえて煽ると、毎回Aは反応をくれて。

ボケてツッコミを誘導したり、Aからさりげなく関西弁を引き出すのが密かな俺のブームだった。

相変わらずしょーもなくて何気ないことを話しながら、ぽつぽつと街灯のともる道を歩む。

「暗いし送ってくわ」

そう言うとやっぱりAは固辞しようとしたから、彼女の前回の言い訳を持ち出した。

「もう住所割れとうしええやろ」

「むむ」

Aが少し顔を顰める。

どうやら説得には成功したようだ。

「上着ありがとーな。

寒ない？」

Aの家が見えて来たときだった。

心配そうに俺の顔を覗き込むAに、にっこり笑う。

「大丈夫やで」

それを見て、少し躊躇ってからAは言った。

「また今度洗って返すわ」

全然そのまま返してくれてええんやけど。

でもそんな本音は言わずに、俺は言った。

「ほな、次な」

そうしてまた次の約束を取り付けたのだった。