【ut】俺の初恋 (ページ12)

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ナンパから始まって、一足先にお家デートを満喫した俺らは

「今安いらしいから行かない？」

と言った可愛げのないAの言葉で明日、水族館に行くことになった。

めっちゃ楽しみ。

こんなにわくわくしながら指折り数えて待つのは小学校時代の遠足以来だ。

と言うのは嘘で、多分これが初めて。

はよ明日ならんかな、そう思いながら俺はいつもより早く電気を消した。

「お姉さん一人？俺らと遊ぼうぜ」

待ち合わせの四十五分前、前回と同じ駅のオブジェクトに向かっていると、

その前で複数人の男に絡まれているAがいた。

男共の動向に注意しながら、慌ててAたちの方へ向かう。

「先約がありますので遠慮させていただきます」

ただ事務的に答えるその冷たい声に、思わず足が竦む。

それはどうやら俺だけではなかったようで、それでも男の内の一人がAの肩を掴んだ。

「誰や知らんけどそいつに触らんとってくれますか」

Aと男の間に割り込む。

さりげなくAの手を引いて

「ほら行こ」

と促すと、Aは

「おはよう」

と微笑と共に明らかに場違いでいつも通りの爽やかな挨拶をして、

男らには目もくれずくるりと踵を返した。

Aに合わせて男らを置き去りに立ち去りながらも、

その何とも表現できない潔さに内心戸惑っていた。

ここまで来ると逆にあいつらが可哀想にも思えたが、やっぱりいい気味だと思った。