【ut】俺の初恋 (ページ11)

今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:16,949 hit

○ ページ11

「よっしゃまた俺の勝ち、はい乙ー」

二、三戦目はまだ順調だった。

だが悠長にAちゃんを煽っていられたのはそこまでで、ここのところ連敗している。

「おいおいキレんなって、もうちょい大人んなれよ」

「何のことでしょう。

あ、もしかして数々の子供じみた煽りを繰り出した過去の自分に言ってる？」

横から顔を覗き込むと、ツンとすました声とはうらはらにAちゃんの顔は楽しそうににこにこと笑っていた。

だからさ、そーゆーとこやで？

何がとは言えんし、言わんけど。

やっぱり、彼女と過ごす時間はあっという間だ。

「わ、もうこんな時間」

時計と窓の外とを見比べながらAが言った。

「今日はありがとーな、

そろそろお暇(おいとま)さしてもらうわ」

俺がそう言うとAはちょっと寂しげに笑って、

「こちらこそありがとう」

と言った。

頼むからそんな顔せんとってくれ。

嬉しいけど____

_____期待してまうから。

「お邪魔しました。ほな、またな」

「うん。また」

駅まで送ろうとするAを何とか説得し、簡素な挨拶とともに家を出た。

知れば知るほど、色んなAがいて。

その全てに、惹かれて行く。

呼び捨てでええねんで、視線をテレビ画面に向けたたまま何気なく放たれた言葉を反芻する。

ふわふわと空に飛んで行ってしまいそうな心を抱えた俺の足取りは軽かった。