ヲタクがリアルに転生したよ【ツイステ】 (ページ9)

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現在Aは、なんとかあの、ヒソヒソ声やら痛い視線やらに耐え抜き、この先この世界での私の唯一の安心場所となるであろうオンボロ寮の前で、ワァーホントホントにオンボロだーいとか思いながらつい先程の出来事を振り返っていた。

あの後、若干シラフに戻ったヲタクはさすがにグリムが不憫であったので、付けっぱなしだったジャラジャラ首輪を外してやったのである。すると外して直ぐに彼女から距離を取ったグリムは、やれ入学のその席を譲るんだゾ等としっかり暴れだして、先輩方との格闘の末、彼は悲しいかな学園を追い出されてしまった。それを踏まえての先程の無である宣言である。彼女の心情と言ったらもうズダボロであった。
ちゃっかり宇宙人扱いもされていたのだが、思っていた以上にメンタルに来た。私ならもっと喜ぶかと思ってた。

そうしていろいろな過程を踏まえてやっと到着したオンボロ寮前。この時まだストーリー序章！先が長ぇぜと心の中で嘆くAだったが、ここでまた問題が発生したのだ。なんというか、なんというか…！

「思ってた以上にボロすぎんか」

「ええ、趣があるでしょう？」

いやはや、やはり肉眼で見ると細部までよく見えるのだ。木材でできた扉はかなり虫に喰われているようで随分とスカスカ、通気性の鬼である。外壁に使われている塗料は激しく変色し…、いやそもそも剥がれ落ちてしまっているのが殆どだ。玄関の扉越しではあるものの、あっちやこっちでカサカサしている命の音もそりゃそりゃ良く聞こえる。

ワビ、サビ。日本の文化。兼好法師の綴った話であったか、必ずしも完全な状態が好ましいとは言えない。欠けた月にこそ、散った桜にこそ見いだせる味わいというのが、情趣を解した趣というものである。日本人の心である。偉大な先人は確かにそう言った。授業で習った時に、一人のニポンジンとして共感したのをAはしかと覚えている。

しかし、だがしかしだな先人よ。見いだせる趣にも、限度というものがあるのではないだろうかと、彼女は心中の詩人たちに問いた。ここに住むのがお世辞にも快適とは言えないのは、誰が見ても一目瞭然である。
とは言ってもヲタクはここに置いてもらう身なのだ。有り得ない量のカフェインが分解し終えかけている彼女に、文句など到底言えるはずがないし、むしろ雨風凌げる場所を提供してくれて有難いとすら感じていた。のだが。

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