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それで次に記憶があったのは保健室のベッドに自分が横たわっているということだった。
何故自分がここにいるのか理解出来ず、
開ききらない目を動かして周囲を伺うと、私の手を握りながら眠るデュースの姿がある。長い間握っていたのか、すっかり体温が移っていたためそこで初めて気づいたのだ。
「…ス、デュ、ス」
声がかすれて上手く出ず、精々2、3時間だと思っていたものの、いったい私はどれだけの間眠っていたのだろうと不安に駆られる。
「ね、デュ、ウ、ス」
とにかく状況が知りたくて、回らない口を回しながらデュースを揺する。すると彼はすぐに目を開いた。
「、!A起きたのか!!」
「私な、で、ここに」
私の喋りにくそうな様子を見てなのか、デュースは苦しそうに顔を顰める。
「朝のこと、覚えてないのか?」
「朝…」
朝と言っても、今日はなんだか最初から記憶が曖昧なのだ。またいつものようにリドルさんが押し掛けてきて、私は無理矢理登校させられて、
「???」
私は今日、彼に抵抗なんてしただろうか。それだけでは無い。いつもはしっかり心にある嫌悪感に近いものがなかったような気さえする。おかしいのだ。
リドル・ローズハートは私が元の世界に帰るということにおいて邪魔な存在だ。彼に限らず、交流関係は深くならないよう心がけてはいたが、なんてったってリドル・ローズハートはお構い無しにずかずかと踏み込んでくるもんだから。
早く諦めればいいと思って、
でもいつまでもしつこいからだんだん鬱陶しくなってそれで嫌悪感生まれて、
ああそういう事か。
してやられた。白いシーツがぐしゃりと歪む。思わず怒りで肩が震える。してやられた。してやられたのだリドル・ローズハートに。あいつに。
精神操作の類の魔法でもかけたんだろう。あの日毎時間のように教室へ来ていた彼に私は呆れるばかりで、警戒なんて全くしていなかったから。おかげで今湧き上がる怒りは悔しさのみで、「リドル・ローズハートがしつこくて嫌悪感すら感じる」という気持ちはもう、どこをどう探しても見当たらない。
「やばいやばいやばいやばいああほんとにもう私の邪魔ばっかり」
悔しくて悔しくて、涙で視界が歪む。こんなことばっかりにつまづいていたらあの子の元に帰れないのに!あの子には私しか居ないのに!
デュースはそんな様子の私を見て驚いたようで、私がきつく握ったせいで繋いだままの手を強ばらせた。目を合わせると、酷く悲しそうな顔をした。
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らぱ(プロフ) - オパールさん» ほんとに刺さってるみたいで良かったです〜!ありがとう! (11月12日 21時) (レス) id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
オパール - あああ!性癖にぐっさり!刺さりました! (11月10日 18時) (レス) @page40 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 青藍さん» ありがとうございます🤤嬉しすぎて溶けそう🤤伝わりましたよ、好きになってくれてありがとう🥳🥳🥳 (2022年5月24日 16時) (レス) id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
青藍(プロフ) - うわぁ、ものすごい作者様を見つけてしまった……どこか大切なところが欠けてるような、ずれてるような、そんな感じで、どこか不気味で不安定な感じにどきどきして、歪んでどろどろした、そんな感覚がとても好きです、上手く伝えられなくてすみません、応援してます。 (2022年5月24日 13時) (レス) @page40 id: 2e61a566e8 (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 愛涙さん» わわわ私を喜ばせる天才ですか!言って欲しいこと全部言ってくれて嬉しすぎる!✨ありがとう私も大好きだ!!! (2022年1月14日 21時) (レス) id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らぱ | 作成日時:2021年12月3日 22時