ボイスチェンジャー【lntn】

ボイス26 ページ26

「さて、寝よっか」

俺ソファで寝るから寝室のベッド使って、と言われてそんなそんなと遠慮の言葉をたくさん述べる。

「若尾さんの家だし私がソファで寝るから…！」

「……いや、さすがにそれは男としてできないっていうか……それに、藤田さん疲れてるし、ちゃんとしたとこで寝ないと明日辛いでしょ」

痛いところを突かれてしまってう、と声が出る。でも本当に申し訳ないし、どうしよう。
お互い譲らずに膠着状態が続いている。眠いからソファでも十分ぐっすりいけそうなのになぁ。あくびがでて意識が朦朧としてくる。そのとき、若尾さんが小さな声で呟いた。

「じゃあ……一緒に、寝る？」

「えっ……え？」

聞き間違えたのかと思って彼の方をみると、真っ赤になって俯いていて。

「ウソウソウソなんでもない、俺は何も言ってません〜」

騒がしくごまかしながら素早くクッションを持ってきて顔を隠す彼を、私も意識してしまう。
「俺ここで寝るんだから早くベッド行って！」
ソファで丸まって布団をかけて彼はダンゴムシのようになっていた。なんだか居た堪れなくなり寝室に急ぎ私もぽすんとマットレスに身を委ねた。布団からは彼の匂いがして、なんだか心地よくて、すぐに瞼が重くなっていくのだった。

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