恋慕奪い愛(4) ページ4
「社長…」
「帰るまで黙っていろ」
ため息とともに社長がそう言って私達の間には気まずい雰囲気が流れる。
御免なさい、怖かった、ありがとう、信じてた。
色んなことを言いたいのに上手く言葉にできない自分が嫌になった。
社長の匂いと温かさを感じて、安心したし泣きたくなった。
しばらく夜道を歩いた後、社長の家に着いた。
家の中に入れてもらい、居間にそっと降ろされる。
「色々聞きたいが…茶を淹れてくる」
こくん、と頷くと社長は台所に入っていった。
ふと居間にある鏡の自分と目が合う。
その目は酷く疲れきっていて化粧も若干崩れかけ、我ながら最悪の顔だ。
シャツは上の方はボタンを外されている。
首筋には紅い花が咲いている。嗚呼、あの時森に…。
一気に現実に引き戻され血の気が引く感じがした。
見られたくない、そう思ってボタンを上まで留め直して慌てて首筋を隠した。
ぬっと社長が暖簾を上げてお茶を載せたお盆を持ち、居間に入ってくる。
机を挟んで私と向かい合うところに座り、お茶を置いた。
「春野には劣ると思うが…まぁ飲め」
そう言って自分もずずっとお茶を啜ってから小さくあつっと零した。
「それでA、今日私のところにこんなものが届いた」
社長は携帯を出し、私に画面を見せた。
そこには縛られた私の姿が映っている。というかtoとfromのところ「福沢君」と「森医師」って書いてあって前々から連絡先持ってる…。
「消してください」
「無論だ(消す気は無い)」
お茶を飲むと梅の香りが優しく広がった。
「それと、何故私との交際を森先生に隠した」
「それは、その……社長に迷惑がかかると思って」
「迷惑などでは無い、寧ろ言ってくれた方がいい。その方が守り易い」
「え…あ、はい…」
恥ずかしさと嬉しさが混じって集まった熱は次の言葉で一気に冷めてしまった。
「何もされてないか?」
「ぁ…」
私は社長には嘘をつけない。それは社員としても、恋人としても。
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赤羽 - 最高!続きいつまでも待ってます、、二千年後も (2月23日 17時) (レス) @page25 id: 462520c403 (このIDを非表示/違反報告)
りお - 加藤めっちゃ人気やな…良かったな加藤☆ (6月13日 20時) (レス) @page25 id: 277740fe28 (このIDを非表示/違反報告)
るりら - 最高 (2022年12月25日 16時) (レス) @page7 id: db0aaa71fc (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 加藤ー!安吾よ。((後何言うんだっけ?あれ? (2022年3月10日 21時) (レス) @page25 id: e165a9ec89 (このIDを非表示/違反報告)
鏡花 - 推していても推していなくても、全てのキャラがかっこいい…素敵な作品、ありがとうございます! (2022年1月22日 13時) (レス) @page25 id: 4b25a88413 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しぐれった | 作成日時:2019年7月7日 14時