怪我5 ページ5
咀嚼をして呑み込むだけでも一苦労だ。
「美味しいです。料理上手なんですね」
「喫茶店でバイトしてますからね」
「公安がバイトって不思議な感じですよね。
ふふ、公安の貴方がハムサンド…ふふふ、ハンサムなハムがハムサンド…」
「そら、次のサンドイッチだ」
サンドイッチを人を黙らす道具に使用しないで。
もぐもぐと口いっぱいに入れられたものを咀嚼している。
「どうしてあんな無茶をした」
「私があの部隊の中ではああするのが合理的だったんです」
「無線で報告する前に自分が逃げればよかっただろ」
「のこり20秒で爆弾解体する能力もなかったのでね。あれが最善だと思いました」
咀嚼を終えて話し出すとなぜか怒られてムッとする。
「もっと!!俺たちを…俺を頼ってほしかった!!」
「っ!?…ゴホッ!ゴホッ!!」
「だ、大丈夫か!?」と背中をさすってくれる彼はやはり優しいという部類に入るのだろう。
しばらく咽て咳をすると「水を取ってくる」と席を立った気配がした。
口元を手で覆って、咳を小さくする。
咽たふりをして赤くなった顔を誤魔化していた。
…あの人、あんなこと言うキャラだっけ!?
はぁぁぁぁぁぁあああ!?
同じ公安のゼロで数年間一緒にいるがそんな事聞いたころもなかったぞ!!
降谷さん何があった!!!
こんな状態で怪我が治るまで一緒にいるの!?マジで!?
心臓が持たない。
こういうのはダメなんだってば。
ハニートラップとか仕掛ける側だったし。
でも清いまま保ってきたんだよ。
26でも清い体を保ってきたんだよ!!!
心の内で激しく動揺しているが、顔には出さず、ただただ口元を手で覆っているだけだ。
水を持ってきてくれた彼にお礼を言って水を飲む。
そして襲ってきたあの感覚。
スポーツドリンクに水。
「あの…とても申し訳ないのですがお手洗いの場所まで案内してもらえませんか」
こればかりは生理現象だ。諦めよう。
くそっ!!!!
めちゃくちゃに恥ずかしい!!!!
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作者名:蘭兎 | 作成日時:2020年4月14日 15時