怪我1 ページ1
とある倉庫にて、周囲を確認する女性がいた。
27歳の独身女性が銃を片手にスーツで港の倉庫にいるというイレギュラーな状態である。
壁に体を押し付け、曲がり角から向こう側をそっと覗くと何もない空間に段ボールが一つ。
「こちらウルフ。クリアです。段ボールが室内に一つあります」
右の耳についているイヤホン型の無線に話しかけると「了解した」と一言帰ってきた。
段ボールに近付いていくと蓋が開いているのが分かった。
銃を構え、前の段ボールだけでなく、曲がり角の死角になっていた横側、今まで着た道の先など様々な方向からの気配を探索する。
中身を覗く。
「こちらウルフ!非常事態発生!!総員退避せよ!!段ボールの中身は爆弾!!繰り返す!段ボールの中身は爆弾!!残り時間は20秒!!早急に退避せよ!!」
後ろの方で「退避―!!」と叫ぶ声が聞こえる。
走っている間に15秒になった。これでは何もできやしない。
せいぜい先ほど身を隠していた曲がり角に身を滑らすのが限界だった。
段ボールからピー、と警告音が鳴るのとほとんど同時に角を曲がった。
そして彼女の「くそっ」とつぶやいた声は爆発の炎と爆風にかき消された。
大神(おおかみ) A27歳。
27年生きた最後の言葉が「くそ」で終わるのかと思った。
身長165センチ、大学で心理学を学んだあと警察学校へ入学。そして25歳の時に公安ゼロへと移動。とある任務中に爆発に巻き込まれた。
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作者名:蘭兎 | 作成日時:2020年4月14日 15時