怪我2 ページ2
暗い…?
目が開かないのか。何だコレ。
私は、死んだのか?
生きている間に少しでも誰かの役に立てたかな。
暗い世界の中で思考が先立つ。
そして体が重いと分かると腕を上げて目元の違和感を探ろうとした。
右腕を動かすと反対の左の肩や胸のあたりが猛烈に痛んで息をのんだ。
「起きたか!!」
ぼやけた音の世界の中で、かすれた声が聞こえた。
そして宙に浮かせた手に誰かのぬくもりを感じた。
この私が人の気配を感じないとは。
誰だ貴様。
「自分の名前は言えるか?」
「お前はだれだ」
威嚇の意味を込めて声を低くして聞いた。
やたらと自分の声が近くに感じる。
「俺だ。バーボンだ」
「え、あ、はぁ!?」
水中にいるような、ぼやけた音の世界の中でその名前はきちんと聞き取れたし、何よりも声も、その人物の香りも覚えている。
というか握られている手を驚いて自分からギュッと握ってしまった。
なんでここに!?ここってどこだ!!
心の叫びを聞いていたのだろうか、説明をしだした。
「ここはセーフハウスだ。お前は組織が残した爆弾の爆発によって体の左側がひどく傷付いている。鎖骨と肋骨はヒビが入って、両目に傷。
脳へのダメージはないが目やイヤホンを付けていなかった方の耳を負傷している。
耳は徐々に回復する。そして目はしばらく光を見ないようにしていれば2週間ほどで見えるようになるそうだ。
犯人は確保し、組織も解体した。あとは残党狩りだけだ」
ゆっくりと、はっきりと、聞こえるように説明してくれている上司の優しさが心にしみる。
「ありがとうございます。任務を完遂できずにすみませんでした」
なるほど、耳を負傷してるから聞こえ方が違うのか。
犯人捕縛の命を受けてあの倉庫に特別に組んだ部隊と共に行ったのに、自分だけが何もできずにここで倒れているとは情けない。
「犯人は風見が捕まえたからお前が気にすることじゃない」
「風見さんやみんなは無事でしたか!?…っぅ」
気持ちが高ぶって起き上がろうとするとさっきとは比べ物にならないくらい痛かった。
「ちゃんと話聞いていたのか?肋骨や鎖骨にヒビが入ってると言っただろ」
若干怒っている声が聞こえ、いまだに握られている手の上にぬくもりを感じた。
たぶん、両手で握られた。
ふぅ、と短く息を抜いて再び寝具に身を沈めると急に頬を触られた感触があった。
反射的にビクッと身を引いた時に左側が痛んだ。
不便だな。
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作者名:蘭兎 | 作成日時:2020年4月14日 15時