しち ページ7
「うわっ、2人でお風呂はいったの?うわっ、引くわぁ」
「誰のせいだと思ってやがる」
「それより何してるの?」
「んあ?此奴が怪我してるから医務室に」
今は中也の腕の中で、上気した顔をして大人しく抱き上げられている。
子供服なんてないので中也のシャツ1枚だ。
ーーーーー
数分前の風呂場にて。
「お前、傷だらけじゃねえか!?…こりゃあ染みるかもな」
「痛いの、我慢、する」
「我慢しなくていいけどよ」
小さな背中を洗いながら中也は傷の様子を診ていった。
さっきまでは気が付かなかったが、真新しい傷の他にも変色した打撲痕、火傷、刺し傷、細長い裂傷など歳には見合わない傷。その背中の下の方に数字が焼印されていた。
「これ、どうしたんだ?」
つぅ、と数字をなぞると身を硬くする少女。
「ほかの御主人様にも聞かれた。分からない」
「……そうか。そろそろ流すぞ」
ゆっくりと湯をかけた後、2人で湯船に浸かった。
そこからは手際よく中也が髪を乾かしてくれたり、シャツを着せたり甲斐甲斐しく世話を焼いた。
そして足が腫れ上がっている事や、手錠や首輪のせいで凍傷になり掛けている箇所の治療のために医務室に来たところで太宰と遭遇したのだった。
「あ、森さん?いま医務室に来れば幼女を診察できるよ」
「おい手前!幼女ってやっぱり分かってたんじゃねえか!!つーか首領呼ぶなよ!!!」
「私を呼んだかね!?」
早速ドアを勢いよく開けて入って来た森。
「あ、森さん。ぼくの腕を折ったその子の治療してあげてよ」
「っ!?ごめんなさい、ごめんなさいっ」
自分が加害したと知って中也の腕から抜け出してボロボロと涙を流して土下座をするのだった。
「太宰君、そんな意地悪を言わないの。ああ、小さい子の涙久し振りに見たぁ」
「森さん顔ヤバイ」
「おっと、そんな事より、ほら。君も泣き止んでくれたまえ。よしよし」
土下座というより蹲って完全降伏の体制をとる幼子を抱き上げて椅子に座らせた。
溢れる涙を白衣で拭いて頭を撫でる。
「はい、すみません」
「私は森鴎外。医者だ。ちょっと怪我の様子を見せてね」
涙で潤う瞳で森の紫の瞳を見つめた後、中也の顔を見るのだった。
それはまるで、この人物が信用に足るのかどうかを尋ねるように。
中也もそれを汲み取って1つ頷いた。
「お願い、します」
彼女の言葉から始まった治療は数時間に及んだ。
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作者名:蘭兎 | 作成日時:2019年8月1日 22時