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はち ページ8

「んん……んァ?居ないっ!?」

昨晩の激務のため、昼過ぎに自室のベッドで目を覚ました中原中也は、覚醒と同時にあるものが消えていたため、驚いて声をあげた。

部屋を見渡しても居らず、ベッドから降りてすぐに問題は解決した。
「…驚いたぜ…そんな所に居たのか」

ごめんなさい、とうわごとを繰り返す少女。
辛そうな顔で小さな身体を震わせ、丸めながら壁に押し付けるように眠っている。

あぁ、擂鉢街のチビたちでもこんな怯えて寝る事はなかったのに。
昨日みた身体中の怪我と言い、此奴はどれだけ悲惨な目に合って来たんだ。

そっとしゃがんで髪を撫でる。
朝日を浴びて輝く髪が少し赤くなって俺の髪色に似てる。

「…っ!?」

「おはようさん。何でこんな床で寝てたんだ?」

「沈むのが、怖かった」

「はははっ、そうかそうか」

顔色を伺うようにおとなしく頭を撫でられ続けている様子が堪らなく平和に思えてきた。
そうだった、俺も初めてベッドで寝た時は驚いたな。

「腹ァ空いてるだろ。今日は出かけるから先に飯食おうぜ」

ーーーーーー
「よし、できた。好きなだけ食え」
食卓にはスクランブルエッグやサラダ、コーンスープとトーストを並べた。
それを紫の瞳は不思議そうに眺めていた。

「御主人様と同じの…?」

「御主人様だぁ?昨日も言ったが俺は中原中也だ。それ以上でも以下でもねぇよ」

「ちゅーや、さま?」

「もう一声」

「ちゅーや、さん?」

「おう、それで良い。ほら、冷める前に食べようぜ」

席に座って恐る恐るスープの器を手に取る少女。
その間に俺はトーストにバターを塗って齧りながら今日の予定を思い出す。

「温かい、美味しい」

「そりゃあ良かった、作り甲斐があるな」
小さな声だったが、その表情は初めて見る柔らかいものだった。


ーーーー
服屋で採寸し、注文した服が完成するまでに着る分の服を購入。
その後は美容院に行って雑に切られていた髪を整え、某有名レストランで昼食を摂り、最後に俺が利用している靴屋に連れて行き、自宅に戻った。

「疲れたか?」

「中也さんの方が、疲れてる?」

この過密スケジュール中ずっと抱きかかえていた事に対しての心配だろう。
また顔色を伺うように俺を見上げる。
体温の高い此奴を抱えていたおかげで冬でも暖かかったし、何故かいつもより疲れていない。

「俺は平気だ…っと。首領からの電話だ」

電話で呼び出された。
昨日の今日だが、此奴についてわかった事があるようだ。

きゅう→←しち



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作者名:蘭兎 | 作成日時:2019年8月1日 22時

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