じゅうよん ページ14
「上出来じゃないか」
「これで、いいの?」
「うん、簡単でしょ?」
「もっと、大変なのかと、思った」
血の模様を上から不思議そうに見つめる少女。
「簡単に人間は死ぬと言うのに僕は未だに死ねない。嗚呼、なんて不運だ!この酸化する世界の何が楽しいんだろうね?」
役者のように大きな身振り手振りでわざとらしく言葉を紡ぐ太宰。
「ふわふわ、楽しい」
「そろそろ戻っておいで」
にこりと笑う太宰。
「はい…っ!?」
二階くらいの高さから降りてくる間に、弾丸が肩を貫いた。
体への衝撃から数秒遅れて襲ってくる熱と痛覚、
意識が遠のき、異能の渦を爆発させる。
遠くの方で誰かの声が聞こえた。
ーーーーー
目の前には誰かの温かい胸。
背中には熱い手。
顔を上げると青い瞳とかち合った。
「全部をアイツに預けちゃダメだ」
「…ちゅーやさん?」
「よし、青に戻ったな」
そう呟いて離れていった。
「ちょっと。いきなり暴走しないでよ」
「ごめん、なさい……ここどこ?」
周囲には木の1つもビルの1つも残らず、穴だらけになっている。遠くの方にかろうじてビルの残骸があるのみだ。
「さっきいた所」
「全部アイツが食っちまった」
「ごめんなさい!」
顔から血の気が失せていく。
「謝まんなくて大丈夫だ。片付けの手間が省けた。
それより太宰!!手前さっさと解除しろよ!」
頭を撫でながら慰めていたその右手は今や太宰の胸ぐらを掴んでいる。
まだ汚辱状態だったのに太宰に手を掴まれた途端に消えていく痣。
「えー、だって見てるの楽しかったんだもん」
「だもん、なんて言っても可愛くねえから!!」
「その子は荒覇吐の神域なんだろうね。その証拠に汚辱形態になっても中也はさっき意識を飛ばさなかっただろ?代わりにAちゃんが意識を飛ばしたみたいだけど」
「しんいき?」
「そうか、そう考えると辻褄が合うな」
話の半分も理解できない様子で空中を漂いつつ自力で異能の解除に努める。
「ほら、おいで。君も解除してあげる」
「自分で、頑張る、いい」
「おお!偉いぞA!」
中也たちと同じ視線になるまで高度を落としたAの頭をよしよしと雑に撫でる中也。
親バカである。
「でも残念。僕と手を繋ぐからだめー」
「あっ、」
太宰に手を繋がれ異能が強制解除。
すとん、と受け身を取り両足で着地した少女。
褒めながら空いた手を繋ぐ中也と3人で帰路につく。
その様子を瓦礫の側で見守る人物がいたのはまた別の話。
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作者名:蘭兎 | 作成日時:2019年8月1日 22時