marionette doll【霧隠ラント】

35，策略 ページ44

「 …1，あの日…廊下であったあの日までは、私がこの学園にいることは知らなかったのか？」

「…いいえ。準備を進めていくうちに知りました。…最初は嬉しかったけど、だんだん悪評も耳にすることが多くなって…思った以上だったけど。」

要らないことまで言ってしまった。
どうも、ラント君を目にすると…つい強気になってしまう。──というか、何言われてもいいように、今のうちに自然と防御してるのかもしれない。
そんな私の失礼極まりない発言をサラッとスルーして、ラント君は次の質問へと移ってくれた。
…余計な事言わないように気を付けよう…。

「2，演劇は、まだ続けているのか？」

「…編入したばかりですし、今は休止中ですが…卒業したら、また住んでた街に戻るかもしれません」

「…3，…君は、今の私に会ってみて、どう感じた？」

躊躇うような素振りを見せたラント君だったけど…
その反応から察するに…どうやらここからが『本題』のようだ。

「…優しかった思い出しかなかったから、何もかも変わっちゃってて…正直…悲しいな、って。……あの時の約束だって、私は貴方をちゃんと見つけて…」

「4。」

言いかけた私の言葉を遮って、ラント君はそう言った。俯いてしまったから、顔はよく見えないけれど──それは今聞きたくない。って事かな。

「…君は、私がまだ好きか？」

「…っ！？…そ、そんなの、本人に言えるわけ…っ！」

既に縮まっている距離をさらに縮められて、少しドキッとしてしまう。近い、美人が近い。
…好きか、なんて…本人の前で言わせるとか、もはや公開処刑でしょ！

「答えて。」

何言われてもノーコメントでいよう…なんて思っていたのに、いつもと違う中学生らしい口調と近すぎる距離、そしていつもと違う…低くて甘ったるい声。
そんな声で、そんな距離で囁かれたら…答えるしか、ないじゃないの。


「……好き、だった。」

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