嘘の魔法にかかったフリをして/rt ページ7
放課後になり私は急いで教室を飛び出した。
呼び出した場所に行くと先輩はまだ来ていなかった。
しばらく待っていると大好きで仕方ないその人は来た。
「あ、いつも図書室にいる…」
「そうです。A……Aです」
「知ってるよ」
「なんで……」
「名札とか見たらわかるよそのくらい」
「そ、うですよね……」
先輩が自分の名前を覚えいてくれていることだけでもう充分嬉しかったのだが、それでは駄目だ。
今日私が香坂先輩を読んだのは想いを伝えるためだと言い聞かせた。
「あの！今日呼んだのは言いたいことがあって……」
「うん」
「好き」という言葉が喉に突っかかって上手く声が出せない。
恋をするとたった一言さえ言えなくなるなんて知らなかった。
「ごめん、なさい。上手く、喋れなくて」
「ゆっくりでいいよ」
こんな時までこの先輩はつくづく優しすぎて涙が出そうになった。
「す……きです。好きなんです、香坂先輩のことが。初めて見た時から、好きです」
「好き」という言葉がやっと出たことにすっきりするのと、返事がどう返ってくるのかの不安と緊張が混ざって私の小さな胸はいっぱいだった。
「ありがとう。でも、ごめん。俺、忘れられない人がいる」
付き合えるなんて期待は最初からしていなかった。
知り尽くしていると思ったのに私は好きな人に好きな人がいることさえ知らなかった。
そんな可能性なんていくらでもあるのに私は浮かれていて気づかなかった。
それでも、2年間先輩のことが好きだったのだ。簡単に諦められず、気づけば私の足は動いていた。
「それでもいい……それでもいいから最後に、抱きしめてください」
気を抜いたら今にも目から涙は溢れそうで、泣き出すと上手く喋れない気がしたので堪えた。
「嘘でもいいから……私の魔法にかかったフリをしてください……」
「ごめんね、嘘だとしても君の魔法にかかることは無理みたいや」
先輩はそういうと私の手をするりと解いて、ごめんね、と悲しそうな顔をして去っていった。
降り積もった雪の上を歩く音がよく聞こえたのを、覚えている。
思い出すと自分のしたこと全てが間違えていたような気がしてきた。
たくさんの涙で濡れた頬が寒くて仕方ない。
私の初恋はあっさりと溶けてゆく雪みたいな恋で、きっと先輩の記憶に残ることもない。
「さようなら……大好きだった、先輩……」
かじかんだ手で私は冷たい涙を拭った。
君についての作文/uszw→←嘘の魔法にかかったフリをして/rt
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蘭(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます！ (2020年1月8日 6時) (
レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭 | 作成日時：2019年11月30日 10時
