嘘の魔法にかかったフリをして/rt ページ6
「嘘でもいいから……私の魔法にかかったフリをしてください……」
「…ごめんね、嘘だとしても君の魔法にかかることは無理みたいや」
耳がツンと痛む冬の寒さと共に私の初恋は終わりを迎えた。
こんなことなら告白なんてしなければよかった。
なぜこの世は後悔する選択肢を選ぶ不器用な人間ばかりなのだろう、なんて我ながらポエマーみたいな考えだ。
雪が降るのと同時に涙を一人静かに流しながら、一つずつ自分の行動を振り返った。
＿数時間前
誰もいなく静まり返った校舎裏で一人ガッツポーズをするのは流石に虚しさがあるかもしれない。
だがそれ以上に今の私はこれから好きな人に想いを伝えることで頭がいっぱいだった。
高校に入って私は香坂先輩に一目惚れをした。
入学したての頃、消極的で友達もろくにいなかった私は一人で帰るのも恥ずかしく、図書室で時間を潰していた。
下の段の方の本を物色しようとしゃがんでいると私の足元にペンが転がってきた。
黄色いシャープペンシルで、女子のものかと思ったのだが
「ごめん、それ俺のなんやけど……」
そう言いながらこちらに向かって来たのが先輩だった。
この瞬間に私は一目惚れしたのだ。
見た目が圧倒的に好みだったのだが、その後いろんな人の話を聞いたりして先輩のことを知っていくたびに内面にも惚れていった。
先輩は弓道部で、毎週練習がない火曜日に図書室によく来ることがわかってからは図書室に通うことが私の習慣になっていた。
火曜日以外も来ることはないとわかっているのに図書室に私は足を運んだ。
もしかしたらいるかも、と期待を抱いていたのもあるが、図書室にいるだけで先輩に浸れる気がして幸せだったのだ。
今まで十五年間生きてきて「恋」というものを知らなかった私にとって、先輩を好きになってからの毎日はとても楽しくてしょうがなくて……
そんな気持ちだったのだ。
先輩が読んでいた本を読んでみたり同じ文房具の色違いを買ってみたり……そんなことが幸せでたまらなかった。
話す機会はほとんどなかったのだが影から見つめているだけで、たまに図書室で目があったらぺこりと会釈してくれるだけで、私の「好き」が成長するには充分だった。
そして私は先輩が卒業する前に想いを伝えることを決めた。
慣れない3年生の校舎に朝早くに足を踏み入れて、先輩の靴箱に呼び出しの手紙を入れた。
告白のことしか頭にない私のことなんかお構い無しに、授業はいつも通り進んでいく。
嘘の魔法にかかったフリをして/rt→←はちみつレモンの先輩/ky
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蘭(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます！ (2020年1月8日 6時) (
レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭 | 作成日時：2019年11月30日 10時
