重たくなるばかり/uszw ページ16
今私の横にいるのは、幼い頃からずっと好きな人。男女が一緒に帰っているところを見れば大半の人が恋人同士だと思うだろう。そうだったら苦労していない。
そもそも隣の男にはそういう相手がいるのだから。それを知らされたのは今から約1年前のことだった。
「A、ちょっといい?」
そう言った牛沢の後ろからは可愛い女の子がちらりと見えた。
「こ、こんにちは」
見た目通りの可愛らしい声だった。未だに現状を理解出来ていないが「こんにちは」と私も一応挨拶を返しておいた。
「その子は?」
「Aに紹介しておきたいなと思ってさ。B組の瑠璃川さん」
瑠璃川、という苗字でそういえば聞いたことがある、と思い出した。珍しい苗字で覚えていた。紹介したいとはどういうことだろう、と考えていたが神様は酷い仕打ちばかりだ。
「俺、瑠璃川さんと付き合うことになったから。Aには一番に言いたくて」
幼馴染なんていいものじゃない。一番に言いたくて、なんて真っ直ぐな瞳で言われたらどうしようもないじゃないか。幼馴染じゃなければ女の子として見てくれた?好きになってくれた?私の方が先に告白してれば、隣に、居てよかった?
「そう……なんだ。おめでとう」
「ありがとう。今から帰るんだけど、Aも帰るでしょ?」
「ごめん。今日私先生に呼ばれてて!それに、二人だけの方がいいでしょ。恋人同士、だし」
そういうと牛沢は少し顔を赤らめて「ありがとな」と言って帰っていった。牛沢の横を歩く瑠璃川さんを見ながら、改めて可愛くてロングヘアが似合う女の子らしい子だな、と思った。
ふと近くにあった鏡を見ると映るのは無造作に切られたショートカット、背も女子にしては高くて、制服のスカートだって似合わない。女の子らしさなんて1ミリもなくて呆れてしまう。
それも一年前の話で、今となってはロングヘアになった自分がお店のウィンドウに映る。今更伸ばしたって意味なんてないのに。
「どこの店がいいと思う?」
そう牛沢が問いかけてきた。今日は瑠璃川さんの誕生日プレゼントを選ぶのに付き合わされている。彼女の誕生日プレゼントを買うのに女友達に頼ると良くないことが起きやすいのは少女漫画ではお決まりだが、断らなかった自分も自分だ。
この恋は報われないのだ。だから幼馴染の肩書を利用して隣に少しいるくらい、神様には目を瞑ってほしい。
行き場のない恋心は、君が知らない間にも太って重たくなるばかりだ。
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蘭(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます! (2020年1月8日 6時) (レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました! (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘭 | 作成日時:2019年11月30日 10時