終わりまでのカウントダウン【灰谷蘭】 (ページ10)

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10日目ページ10

先輩との2回目のキスはなんだか少し甘かった。
お互い無言で見つめ合う。
私の方が恥ずかしくなって先に目を逸らすと頭上から聞こえた笑い声。
先輩が楽しそうにしてくれてる事が嬉しかった。

『先輩、とりあえず…座りましょ？』

「ん」

甘い空気が私を酔わせる。
いつだって私は先輩に溺れてる。

『先輩どうして今日はお家デートなの…？』

「見たい映画があったから〜」

その理由に少し残念に思ったのが2割、良かったって思ったのが8割。
今日は覚悟も準備もしてきたから早く先輩のものにして欲しいっていう思いもあった。
だけど、抱かれてしまったらもう先輩に捨てられるんじゃないかって言う不安があった。

先輩が私に簡単にキスをしないのは私が下手とかじゃなくてただ大切にしてくれてるだけって思ってもいい？
私を見つめる先輩の目があまりにも優しいから私を好きになってくれてるって自惚れてもいいかな？

ドキドキと心臓の音がうるさくて先輩と見た映画は全然内容が入ってこなかった。

「そいや、なんか飲む？」

『ひゃい！』

不意に話しかけられて変な返事をしてしまった。

先輩は立ち上がって冷蔵庫へと向かう。
今ある飲み物を読み上げてくれる先輩を見ていると、先輩と暮らしたらこうなのかなぁなんて幸せな妄想が浮かんだ。

『カルピスで…』

「蘭ちゃん特製カルピス作ってやるよ〜♡」

『え、なんですかそれ！』

「俺の弟に良く作ってやってんの」

『えぇ、先輩が！？』

「何その反応」

先輩が誰かに尽くす姿なんて想像も出来ないけど…
弟の事を話す先輩はお兄ちゃんの顔をしていた。

噂で聞いてはいるけれど噂に対して全く興味のなかった私には誰が先輩の弟か分かりもしなかった。
ただ、弟もイケメンということだけは知っていた。

『先輩がお兄さんかぁ〜』

「今度紹介してやるよ」

『え、ありがとうございます』

家族を紹介するということは少なからず心を開いてくれているということだと思う。
私は嬉しくて顔が緩むのを必死に抑えた。

先輩が作ってくれた特製カルピスは本当に美味しかった。