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中学生が2人、ぎりぎり入ることが出来るこのスペースに、奥の壁に私の背がついて、後から入った綾人と向かい合わせになって、綾人が片手を奥の壁についている状態。背丈もほぼ変わらない綾人の首元が呼吸に合わせて上下しているのが何故か新鮮に見えて何故かリアルだ、と思った。
ぐるりと1週、教室を見回しているんだろう。この少しの静寂が、もしかしたら私たちの気配に気づいて怪しんでいる最中なのではないか、こっちに先生の意識と視線が向いてるんじゃないかと心臓が落ち着いてくれない。
ほぼ身体も触れていて、綾人の心臓も早いのがわかるほどだった。私も多分同じだろう。でもなんか、それとは別に……。
スタ、チャリン、ガラガラ、トン。
しばらくすると戸のしまった音がして、足音も遠くなって言った。
「あ、焦ったあ…」
どっと肩の力を抜くと、同時に綾人もほっと息をついていた。
ゆっくりと綾人が身体を離す。
体温がするりと抜けて、不意に綾人の顔が目に映る。
ど、どうした…?
綾人は目をキョロキョロさせて、少し赤らんだ頬を冷やすように手の甲を当てていた。顔近っ。
『……危な』
「え?なにが」
『色々と』
棚から出て、綾人はプリントを持つと、入る直前にベランダに避難させたリュックを背負った。
『ねえ早くリュック持って。帰ろ』
かと思えばいつも通りにこにこした表情になり、弟気質満載の足取りで教室を出ていこうとした。
私もリュックをもって後に続く。
『あ、ねぇねぇ』
入口付近で立ち止まった綾人に「ん?」と相槌を売って先を促す。
『さっき……ちょっと意識したでしょ』
「……えっ」
この言葉を咀嚼する前に、綾人はいつもは見せないような片端だけ口角を上げてニヤリとした。
それをちょっと、かっこい…いやそんなそんな。
心の中で偶然にも語尾が重なった言い訳に気付かず、私は綾人の後を追った。
今現在、充電中2%くらい、かも。
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作者名:透野らむね | 作成日時:2022年7月9日 21時