10 甘い物は時に争いを起こす ページ10
数時間後〜
「終わった〜！」
入試の開放感から大きな伸びをしながら雄英高校を後にする。
「入試…どうだった？」
「ああ、うーん。筆記は特に分からないところ無かったし多分大丈夫かな、実技は3位だった！焦凍は？」
「俺は2位だった。」
「えっ、焦凍が2位？1位どんな人だったの？」
「余り覚えてないんだがちょっとうるさい奴だった、そいつに親父の…エンデヴァーの息子かって聞かれてつい素っ気ない態度とっちまった。」
「そっか…。でも1位ってことはきっとその人も雄英合格するよね、もし学校で会えたら話しかけてみたら？」
「…そうだな。」
やっぱりエンデヴァー関連の話をする時の焦凍はちょっと怖い、でもどこか悲しそうにも見える。
お隣さんと言えど安易に首を突っ込んでいいような事情では無いので私に出来ることなんて無いけど…幼馴染として焦凍の心の支えになれたらいいな、と思った。
・
数日後、私はというと`突撃オールマイト’とでかでかと表示されたテレビ画面にクギ漬けになっており入試の事などすっかり忘れていた。
「Aー！Aー！ちょ、大変！ねえ！」
「えー何だよもう…。」
過呼吸になりながら廊下をほふく前進する父さんに唖然としながらも、ぷるぷると震えた父さんの手から封筒を受け取る。
そこにはしっかりと「雄英高等学校」と6つの字が刻まれていた。
「き、きた…。」
緊張と焦りと期待と懸念と…あらゆる思いが溢れ出し、心臓は壊れてしまいそうな程働いている。
すぅ、はあ、と深い呼吸をしてから封筒に手をかける。
「ん…？何これ。」
封筒の中身は紙でも何でもない…何だこれ。
「私が投映されたァ！！」
「ア゛ー！！ って…オールマイト？！」
「いかにも！ 合格おめでとう、明保能少女！」
「へ…？合格…。」
私は誰しもが憧れるNo.1ヒーローに名前を呼ばれた嬉しさと合格した嬉しさで脳みそがパンク寸前になった。
父さんなんて廊下に突っ伏しながら涙で水溜まりを作っていた。
「爺ちゃん！！ 合格したよ！」
「フン、ワシの血を受け継いどいて合格しない方がおかしいんじゃよ。」
「気に食わないけど、ありがとう！今なら何でも許せるよ。」
「昨日、お前の分のチョコレートケーキ食べたぞ。」
「は？」
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作者名：薫 | 作成日時：2020年8月12日 1時
