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『…っ、う……』
私が号泣するのを、天馬さんは見つめていた。
何も言わずに、慰めもせず、ただ無言で。
私はこっちの方が良い。
私は泣き虫だから、泣くと皆は大体慰めた。
“ どうせなら慰めないで突き落として ”
本心はそう叫ぶ。
私は見て見ぬ振りをして、“ 素直 ” に「ありがとう」と言う。
天馬さんは、他の人とちょっと違う。
最初に慰めて、泣く時は無言で居てくれる。
もうすぐ頂上に辿り着く。
あーあ、せめてもっと綺麗に見たかったなぁ。
司「……ほら、顔を上げてみろ」
『?』
司「笑って、くれるか?」
天馬さんがドア側に立った。
遠くに虹が出ていた。
太陽の光と、過ぎ去った雨雲と、出てきた虹が合わさる。
天馬さんが、跪いて胸に手を当て、私を見上げる。
目線が絡み合う。
司「この景色は貴女にしか見せません。
どうか、笑っていただけますか、お姫様」
『っ…!』
視線の糸を無理やり切って、天馬さんの背景を見る。
透明な水の中に居るみたいで、息ができなかった。
『…王子様、私は、笑っても良いのですか…?』
司「! …当たり前です、笑顔が似合わない人など居ません」
『…ですが、私は…っ、笑っちゃ、いけないんです…!』
司「…大丈夫、今はきっと笑えないでしょう。
“ いつか ” 貴女も笑える時が来ますよ」
あ…まただ。
神代さんも言ってた、“ いつか ” 。
私の “ いつか ” はいつ来るんだろう。
涙は止まっていた、天馬さんは微笑した。
『…信じますよ、その言葉』
司「…もちろんです」
『私を笑わせてみて下さい、天馬司さん』
司「! ええ、貴女に誓います」
短いショーが終わり、天馬さんはいつものように笑った。
私は無表情に戻る。
頂上からは離れていく。
ねぇ、お母さん、やっぱり無理だよ。
私はさ、こんな良い人達と離れる事なんかできない。
お母さん達は “ 愛 ” を教えてくれなかったよね。
私は、これからそれを見つけていくんだ。
何て言っても良い、でも私は負けないから。
誓ってくれたんだ、私の『王子様』が。
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僕の書いてる2作品、どっちも親最低じゃ……。
全国のご両親、申し訳ありません。(反抗期真っ只中)
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作者名:ramune | 作成日時:2022年1月10日 19時