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ショーが好きだった。
見ているだけで、幸せな気持ちになれた気がした。
ステージに立つ役者達は、輝いて見えた。
幼い私は、笑いながら見ていた。
楽しくて、この時間がずっと続けば良いのに。
そう思ったのは1回だけじゃなかった。
なのに。
中学校、私の生活は一変した。
先生「撮ります、皆笑って〜」
皆がにこっと笑う。
私も遅れないように、精一杯の笑顔を見せた。
その時、隣から聞こえたんだ、
「悪魔の声」が。
モブA「え、気持ち悪…」
モブB「何が?」
モブA「私の隣の子の笑顔、きもくない?」
モブB「ほんとだ、可愛くな〜笑」
隣だから、当たり前だけど気付いていた。
聞こえないふりをしていた。
でも、その「悪魔の声」はどんどん広がっていった。
私の前、後ろ、左右、そして保護者達。
入学式だから人はたくさん居る。
その全員が、私を見て笑っていたかもしれない。
遠いから見えないはずなのに、
私の両親も歪んだ顔をしていたように見えた。
…やめてよ。
心の中で呟いても、皆には聞こえない。
…私を見て笑わないで。
届かない、届いてはくれない。
視界が揺らぐ、どうしよう、泣いちゃ駄目だ。
…でも、笑っても駄目だ、どうすれば、私は…。
そうだ。
噛み殺した、全ての感情。
何をやっても駄目なら、全て捨ててしまおう。
きっと、この時からだ。
私が「無」になる事を決めたのは。
先生「!」
保護者達「!」
モブ達「!」
そう、私は、無表情になった。
もう良いんだ、早く写真を撮ってくれ。
全て、全部捨てよう。
感情も、友達も、心も、全部。
そうすれば私は、楽になれる?
もうあんな事を言われないだろうか。
あの言葉を、誰も言わないだろうか。
「君に笑顔は似合わない」
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作者名:ramune | 作成日時:2022年1月10日 19時