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陸「Aと話がしたいんだって」


壱「もう話すことも無いでしょう。Aの事見て分からへんの?

何やねん、自分。
彼女出来てもただの後輩に優しくして結局彼女と別れて、俺のこと好きなんやったら付き合ってくれみたいな言い方しよって」


陸「分かってるなら、邪魔しないで欲しいんだけど」


壱「無理です。こいつは、あんたにやらん。」





そう易々とくれてやるもんか。
13年間俺がどんな気持ちで過ごしてきたと思ってんねん。

やっと俺の方に傾きかけてんねんぞ。
こんなとこで渡したら努力が水の泡や。





『川村さん、』


壱「何も言わんでええから、」




少し、顔を上げて、俺を見る。
可哀想に、また目腫れてまうな。

何も言わんでええって、頭を撫でてやる。






陸「何でそこまで言われなきゃいけないの?」


壱「俺、こいつに片想いしてるんですよ。13年間、現在進行形で」


陸「?」




だから何?みたいな顔。
そらそうやわな。




壱「13年、どんな気持ちで過ごしてきたと思います?めっちゃしんどかったんですよ、」


陸「それが何、?」


壱「片想いって、めちゃくちゃしんどいんすよ。」


陸「だから、」


壱「Aも一緒や。」




相手を黙らすように、少しかぶせて語彙を強めた。





壱「Aは、3年間あんたに片想いしとった。本人も気付いてなかったけど、彼女出来たって知ってしんどい思いしとったんあんた知らんやろ。」




しんどい思いさせて、今更付き合っくれって図々しい。





壱「俺もAも似たようなもんで納得できるほど単純やない」







トドメを刺すように言うて、Aの肩を抱いてマンションのエレベーターに乗った。








『ズビッ……川村さん、』


壱「ゲームの続きしよ」






Aの家に戻って、上着を脱いでいると名前を呼ばれた。

泣き止んで、鼻をズビズビ言わしてるA。


何でこんな、泣かされてばっかりなんやろうな。






『ありがとう』


壱「なんかあったらまた言うてな」






今は、それだけでいいと思う。

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作者名:16葉 | 作成日時:2023年1月18日 22時

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