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次の日の朝、自らの横ですやすやと寝息を立てるAの姿を見て、込み上げてきた罪悪感に、千冬は押しつぶされそうになっていた。
白磁のように滑らかな肌。細い体は、少し力を込めただけで手折れてしまいそうで、それでいてしなやかで張りがあって。どこもかしこもびっくりするほど柔らかくて。
夢中になって快楽を啜る自分の腕の中で、少し苦しそうだったA。
三ツ谷の名前を出せば、彼女が抵抗できなくなることぐらい分かっていた。
分かっていて、それをした。
「…ごめんなさい、Aさん」
そっと腕を伸ばして、彼女の髪を撫でる。Aはうっすらと睫毛を震わせたが、その目が開かれることはなかった。
それからは、千冬の恋人として、東卍内部に潜入することも可能となったけれど、相変らず隆に関する情報はあまり手に入らなくて。
知っている人も多かったけど、知らない人もたくさんいた。あのタケちゃんが超高層マンションに住んでたのは可笑しかった。千冬と二人で先にお邪魔していたら、あたふたした様子のタケちゃんが入ってきて。昔と変わっていないっぽいその様子にほっとしたのもつかの間。
――――現在、千冬と私とタケちゃんの3人は、椅子に縛られた状態である。
睡眠薬を盛られて、そうと気付かず飲んでしまったのが原因。…やはり、稀咲なんかを信じるべきじゃなかった。
彼にとって私と千冬は、“裏切り者”何だろうけど。タケちゃんは関係ない。
タケちゃんに東卍を託し、そして、
「巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした。Aさん」
「ちふ…」
――――目の前で、射殺されて。
「いや、そんな、嫌、嫌だ、千冬!!!千冬!!!」
「そういえば、
半狂乱になって叫ぶ私に、稀咲は言葉を続けた。
「“ごめんな、A。ずっとずっと、愛してる”とか何とか」
―――隆だ。こいつが、隆を。――――殺した。
そう理解した瞬間、こみ上げてくるどす黒い憎悪。
「稀咲ぃぃ、許さない許さない許さない、殺してやる、絶対に殺してやる!!!たとえ今死んでも、怨霊になってでも、お前を祟り殺して―――」
その直後に、頭の中でものすごい破裂音がする。一瞬にして、今までの思い出が脳裏を駆け巡って。最後に浮かんだのは、隆の笑顔。
急速に視界が暗転し、やがてプツン、と意識が途切れる。――そこまでだった。
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ま - え、これって駿台模試の英文ですか!? (2022年5月22日 13時) (レス) @page15 id: 8b077b9bca (このIDを非表示/違反報告)
わたし - まって、私坂本なんだけどw (2022年5月11日 17時) (レス) @page6 id: 4ecae0ff80 (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - シュウさん» そうなんですよ…時間があればいろんな人のエンドつくりたいとか思うんですけど、話数的に厳しかったり…(´・ω・`)楽しみにしてくださってありがとうございます! (2021年9月28日 7時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
シュウ(プロフ) - 夢花さん» この作品いつも楽しみにしています。三ツ谷も千冬もマイキーも選べない!各々のエンド作って欲しいです(土下座(願望なだけなのでご無理はなさらなず) (2021年9月28日 4時) (レス) id: ad2f2b2a8f (このIDを非表示/違反報告)
夢花(プロフ) - 千冬…………まぁ、可愛いければなんでもいいよね!!!うん!!! (2021年9月24日 18時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年9月3日 9時