*自分の色 ページ12
もちろんこんな経験生まれてから1度もしたことがないので、戸惑うばかりだ。
「やめて、お願いだから、ね?」
普段から好き好き言っている彼だから、心の底からお願いすればやめてもらえるかと思ったが、それは儚い希望だった。
「いくらAの頼みでも、それは聞き入れることができない」
真顔で返されたかと思うと、また手を動かし始める。
「やめてってば!!」
我慢できずにそう叫び、彼の手首をギュッと掴むと、嫌そーな顔をして、渋々手を止めてくれた。
「…どうして止める?」
不機嫌そうにそう言うが、どうしてと問いたいのはこっちの方だ。
「どうしてって…。ぎ、義勇こそ、そんなに…したいの?」
「したい」
恥ずかしくて真っ赤になってそう問えば、恐ろしい速さで即答された。
最早、真っ赤を通り越して、真っ青…も通り越して、私の顔は真白になってしまった。
今の言葉で、寿命が一気に10年ほど縮んだような気までしてくる。
真顔だった義勇が不意に、ふっと唇を緩めると、先程とは逆に私の髪の毛をそっと指で梳き始めた。
「俺はAの心も、身体も―――この唇も」
花びらを慈しむように、私の肌を撫でていた義勇の指が最後にたどり着いたのは、私の唇。
…指先が最後に辿り着いた美の中心で、義勇はAの桃色の艶やかさをうっとりとなぞる。
「全部全部、俺の色に染めてしまいたい」
耳元で、甘く、低く、そう囁かれて、思わず脱力してしまいそうになるのを、何とか気合と根性で耐えた。
「でっ、でもね、人にはやっぱり心の準備期間っていうものが必要だと思うの、…特に、そういう系のことに関しては、ね?」
納得させるようにそう言ってみると、すぐにまた不機嫌そうな顔に戻ってしまう。
「あとどれだけ待てばいい?1日か、2日か?」
「それはちょっと早いかなぁ!?」
私的には、1か月とか2か月とかそれくらいを想定していたので、ギョギョッとしてしまう。
「せめて3週間!!」
「だめだ、1週間」
「そこをなんとか!!」
「…2週間だ」
粘りに粘って2週間となったが、やっぱりちょっと短いかな、なんて。
…まあでも、いざ怖くなったら、逃げるという手段もあるのでは?
「逃げようなどとは考えない方が良い」
心を見透かされたようにそう言われて、目玉が飛び出るほど驚いた。
「そんなことをすれば、問答無用で容赦なく襲う。…分かったか?」
「…はい。」
そう答えるしかなかった。
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ゆき(プロフ) - #観音坂ゆるさん» 泣いてくださったなんて…!!こっちがうれしくて泣きそうです!!そうです、居酒屋のあの女性は無惨様なんです、あれっきり登場することなかったんですけど…。夢主のことお気に入りだったみたいですね (2021年1月3日 0時) (レス) id: 02cc0a4dd4 (このIDを非表示/違反報告)
#観音坂ゆる - ところで、居酒屋のあの女性は無惨様だったんでしょうか…? (2021年1月3日 0時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
#観音坂ゆる - 最後めっちゃ泣きました( ;∀;)きゅんきゅんしたり、感動したりできる素晴らしい作品ですね!!完結おめでとうございます!! (2021年1月3日 0時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - まるこさん» あっ、もうめっちゃ頑張ります!コメント嬉しいです、ありがとうございます! (2020年11月3日 8時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
まるこ - めっちゃきゅんきゅんします〜〜!続きを心待ちにしております! (2020年11月2日 21時) (レス) id: 8f523f6a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきのふ | 作成日時:2020年9月12日 23時