１１１．厳重注意 ページ16
櫻井さんは、大野さんの肩を抱くようにしてダイニングに連れて行き、ベンチに座らせた。
「智くんってば、こんな大事なこと、なんで黙ってるの。
普段と違う痛みがあるときは言わなきゃ駄目だって、俺、いつも言ってるでしょ？」
「…だって、今朝起きて装着したらそうなってたんだもの。
でも我慢出来る程度だから。
もう少しで新しいのが出来るみたいだし」
「もう少しって言ってもなぁ…。
とにかく事情はわかった。
一日でも早く仕上げてもらうように今日電話しとくから」
「うん…
面倒かけてごめん」
「そんなのは気にしなくていいけど、
問題は『新型』が来るまでどう凌ぐかだなぁ…」
櫻井さんがざっと俺に説明してくれたところによると、「ソケット」とは、太腿に被せる深いお椀のようなパーツのこと。
大野さんと初めて会った日、櫻井さんが、調整のために彼の新しい義肢を持って来た。
そのとき美しい青空のペイントが施されていたのがソケットだ。
ソケットはジャストサイズであることが大切で、その適合・不適合が、義肢との相性の最大のポイントとなる。
ライナーというのは、足を切断して縫合した断端部に被せるもので、断端袋とも言う。
本来、ライナーを被せた太腿はソケットの中に納めると断端部が浮いた形になるのだが、今の大野さんの場合、太腿が痩せたせいで、その断端部がソケットの底に当たってしまっている。
そのため、デリケートな断端部に直接体重がかかり、激痛が走っているのだという。
「断端部に傷でも出来たら、それこそ厄介なことになる。
くれぐれも無理しないようにしてよ？
あと、それ以上痩せないこと。
新しいのも合わなくなる可能性があるからね？」
櫻井さんは真顔でそう言うと、ベンチに座っている大野さんに、「無駄に歩き回らないように」と改めてキツく言い聞かせた。
ついさっき「うんめぇー！」と顔を綻ばせていた人とは思えない。
一方の大野さんは、痛いことをカミングアウトしたせいか、しょぼんとした様子が叱られた子どもみたいで、何だか幼く見える。
櫻井さんは、俺に対しても、大野さんの足に負荷がかかることのないよう、何度も念押しした。
そもそも俺はそのために雇われているのだから、今日こそは土曜日の二の舞にならないようにしなくては。
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kotorix(プロフ) - つっきーさん» つっきーさん♪コメント有難うございます。シリアス寄りの物語ですが、楽しんで頂けたのならとても嬉しいです♪推理の内容はかなりいい加減でお恥ずかしいです(^^;;今後とも宜しくお願い致します！ (2013年10月25日 22時) (
レス) id: e9eb502708 (このIDを非表示/違反報告)
つっきー - 最後のニノと翔君が面白い！ 読んでるとすごく勉強になります 小説って感じがして読み応えがあります（いままでリアルあらしさん設定の話ばかり見てたので・・・）とても面白いです♪ (2013年10月25日 19時) (レス) id: f90ae1b507 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - さっちさん» さっちさん、コメント有り難うございます♪最初シリアスな感じで書いていたのですが、いつしかこんな風に…（笑）吹き出して頂けて嬉しいです♪放置されたＳさんは、只今、清里から急行しているところです（笑）次回登場致しますので、引き続きよろしくお願い致します♪ (2012年10月7日 10時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
さっち(プロフ) - 走り回るニノと電話を放置された翔さん。おかしくて吹き出しました。 (2012年10月6日 22時) (レス) id: 650ca07416 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - 葵羽さん» 葵羽さん、こんばんは♪久々に雨を降らせ、不機嫌な職人さんをシリアスに書いておりましたら、沈鬱なムードに耐え切れずにふざけてしまいました（爆）今頃建築士はパニックに陥っていますが、職人の機嫌は急速に回復する見込みです（笑）どうもすみません！(^_^;) (2012年10月2日 22時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kotorix
| 作成日時：2012年9月11日 18時
