８６． ページ36
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ＴＶ局の楽屋に着くと、ニノと松潤が既に到着していた。
「おはよう」
挨拶を交わして指定席に向かおうとする俺の目に入ったのは、ソファに座るニノが手にしている写真だった。
それは智くんが俺らのために描いた絵を撮ったもの。
十二年間の五人が、背景とともにぎっしりと細かく描かれている。
足が止まった俺を、ニノが見上げる。
「…アルバムのジャケット、やっぱりこれがいいと思って」
以前、多くのファンに見てほしいからとの思いから出た松潤の提案を、商売の道具にしたくないと過剰なまでに拒んでいたニノ。
「冷静に考えたら潤くんの言うとおり。
大野さんが一生懸命描いた絵だから、今はみんなに見て貰いたいと思ってる」
俺に心境の変化を聞かれて、そう説明する顔が素直で優しい。
あれほど頑なだったニノがその結論に至ったのには、彼の夢にも出て来たという智くんの影響があるのだろうか。
松潤が言った。
「リーダーのご両親や会社のＯＫが出てるから、あとは俺らの気持ち次第。
…翔さんと相葉さんはどうかな」
相葉くんが「俺は大賛成」と言い、三人の視線が俺に向けられる。
「俺も賛成だよ」
そう言うと、三人が安心したように顔を見合わせて微笑んだ。
楽屋の雰囲気が、五人揃っていた時のように温かい。
それぞれが帰るべき場所に戻って来たのだと思う。
俺は、止まっていた俺らの時計がようやく動き始めたのを感じていた。
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「そろそろメイク室に移動をお願いします」
スタッフに声を掛けられて、立ち上がる。
相葉くん、ニノ、松潤が雑談しながら楽屋を出て行く。
みんなの後に続こうとしたときに気付く。
智くんの温かな空気感。
彼がここにいるような気がした。
さっきの話を聞いていただろうか。
来月には智くんの思いが詰まった絵が、多くの人の目に触れることになる。
照れくさそうな笑顔が見えるようだった。
「いってきます」
俺は姿の見えない彼にそう言って、楽屋のドアをそっと閉めた。
了
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作者名：kotorix
| 作成日時：2012年1月15日 17時
