チクチクハート (ページ46)

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Side 廉

「あー、行っちゃった後だ。ま、仕方ないか。
永瀬ばいばーい。また来週～」

行ってしまったであろうバスを見つめて言う。

そう言って手を振られたその刹那、
なんかわからんねんけど、勝手に口が動いた。

「送ったろか？」

いやいやいや、俺・・人乗せてチャリ漕げたっけ？
弟ギリやった気がするのはいつの記憶やっけ？

「何？誘っといて不安な顔しないでよ。あ、漕げないんでしょ？私が漕いであげようか？笑」

「っ、馬鹿にすんな！お前くらいのひょろっこい女子やったら、1人や2人余裕や！！ほら、乗れや。」

ふふふ。二宮が笑ってる。
笑い声がすぐ後ろから聞こえる。
それだけで、擽ったい。

あ、俺、変な匂いしーひんかな？
急に不安になったけど、もう遅い。

後輪が沈む感覚。

「じゃ、お願いしまーす。マジで無理だったら言ってよ？まだ、死にたくない。笑」

「アホか！任せとけ！行くで～。」

緊張の一漕ぎ。
あ、全然余裕や。

・・・・決して甘酸っぱい感じはない。

現に二宮は俺の腰に腕を回す事なく乗っている。おそらく荷台かサドルでも掴んでるんやろな・・・それでも、吐息が俺の首に掛かるような気がして、たまに後ろから吹く風が二宮の甘い匂いを送ってくれる気がして・・・それだけで頬がゆるゆるや。

いつも分かれてた交差点に差し掛かると、二宮がここで降ろせって言うたんやけどそのまま二宮家の方向へ漕ぎ続けた。

「序でやし、家まで送ったるわ。案内して？」

「優し。ありがと。じゃ、このまま道なりによろしく。歯医者さんの向かいだから。」

「オッケー。」

しばらく漕げば、歯科医院が見えてきたのでそこで止める。向かいに立派なマンションが建っていた。