チクチクハート (ページ3)

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Side 廉

平野くんとバイバイした後、俺はチャリで通学路にある河原まで出た。穏やかな川の流れは京都にいた時の鴨川を思い出して、学校見学行く前に通った時に絶対来ようと決めてた場所や。

河原に着いて、とりあえず昼飯用に朝買ってたパンを頬張る。春の風が陽気な気分まで一緒に運んできてくれたようでウキウキしつつちょっと寝そうになってしまう。

それくらい1番気持ちのいい季節やと実感した。

周りを見渡せば、歩いている人はいるものの疎ら。
よし、久しぶりに吹いてみよう。

talalalalalalala～♫

良かった、ちゃんと吹けた。
あ、俺、今、サックス吹いてん。

なかなか家でできる事じゃない。
河原があってよかったー！なんてホッとしてとりあえずお気に入りの曲を吹き始めたら・・・むくりと起き上がる人影にびっくりして吹くのをやめてしまった。

いや、そばに誰もいーひんって思ってたしそりゃビビるやん！！

どうやら傾斜になってる芝生の上で寝転んでたらしい。もしかしたら寝てた？・・・それやったら、なんか申し訳ないなって思って

「あ、すんません。」

謝ってサックス片付けようとしたらさ、

「どうぞ、続けてください。」

そう言って振り返ったのは、飴色のような瞳が印象的で、その飴色のように綺麗に染められた髪の毛が春の風に程よく晒されてキラキラ輝く女の子やった。

やっぱり寝てたんかな？目を擦って伸びをした姿は猫みたい。そしてそのまま、また寝転んでしまった。

「え？邪魔じゃないっすか？」

寝転んでしまった彼女は声を発することはなくて、左手で作ったオッケーサインを掲げて否定してくれた。

なんか聴視者がいると思うと緊張するけど、やっぱここで吹きたかったし遠慮せずにサックスをもう一度型に掛けて、吹きたい曲を吹きまくった。

吹きまくってたら、太陽は山の方に向かって姿を隠し始めていた。久しぶりに吹いたせいで、だいぶ夢中になってたらしい。

疲れたっていうよりも達成感の方が大きくて、ベンチに腰掛けて水を飲み干したら大きいため息が出た。あ、いい意味で？

そういえば、彼女は？

慌てて傾斜に目をやれば姿はなくって・・・少し先の川沿いの道を歩く彼女の後ろ姿を発見すれば、なんでかボーッと見つめ続けてしまった。

ぐ～っっ・・・腹減ったな。帰ろ。