チクチクハート (ページ20)

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Side 風磨

ある日の授業。

教室に入れば珍しく生徒と話す二宮Aの姿に少し驚く。

それよりも気になったのが、頭に乗せられたハンカチ。俺が入ると、前を向いてササっと頭を拭いたんだよね。何があった？

今日は珍しく漫画も読まずに板書してるっぽい。
授業も聞いてるみたいだ。

どした？

とりあえず、俺、担任だから・・・
昼休み突入のチャイムが鳴ったと同時に、
二宮Aを呼び出した。

文句も言わずに前まで出てきたので教室を出て数学準備室へ。

「さて・・・ま、そこ座って。」

ソファーに腰掛けるよう促し、俺は紅茶を淹れた。

「一応、俺、お前の担任だからさ・・・なんで髪の毛濡れてたの？」

「ふっ、一応って・・・あー、寝癖が酷くて。だから濡らしました。それだけの事です。」

ほー、シラを切るんだ。俺、朝見てるからね？・・・寝癖なんて全然なかったじゃん。

「そっか・・・今日は授業聞いてくれてたみたいだけど、漫画忘れたの？眠くもなかった？」

「今日は漫画忘れちゃって。昨日よく寝たから、今日は授業に集中出来ました。もう良いですか？お腹空いてるんで・・・。」

俺の皮肉を含めた言葉にもムカつくくらいに表情を崩さない二宮A。漫画のことも言い訳なく認めてる。なんだよ・・・

「紅茶、ごちそうさまでした。」

そう言って立ち上がると出て行こうと背中を向けたので、思わずその背中に問いかけた。

「もう、バレたか？」

俺のこのたった一言で、足が動かなくなる。
表情は確認出来ないが、身体を固くし瞬時に全身で警戒のアンテナを張り巡らせたのがわかった。

大きく肩で息を吐いたと思ったら、
振り返って一気に捲し立てた。

「何ですか！？そうです、二宮和也の双子の妹ですよ。それで何か迷惑掛けました？私、結構ひっそり過ごしてると思うんですよ。まだ足りませんか？息もするなって言いたいんですか？」

その顔は苛立ちを隠そうともせず、初めて見せた感情の現れだった。漸く本音のお出ましだ。

でもこのままじゃいけない。
俺は二宮の腕を掴んでこの部屋に留まらせようとしたんだけど、胸の奥底に眠っていた苦痛が二宮を取り込んでしまい、俺を射抜くように睨み付けると腕を解いて出ていってしまった。

「あー、何してんだよ。」

俺の頼りない声だけが準備室に響いて消える。