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第5話 ページ7

あの後、間もなく百華の者が訪れたが、青年は既に姿を消していた。

畳、壁、天井に散った血と、1人転がる男の惨殺死体。

異様な光景を見て、彼らは数人、嘔吐したという。

口から“何か”を捻じ込まれ、首の後ろに貫通したという男の死骸。

その“何か”が傘だとは―――私しか知らない事実だ。

あの中国風の服を纏った青年が現れて、今日で3日経つ。

私の遊郭では、どうしても拭えない澱みが漂っていた。


―――ねぇ、雪の相手した男。実は雪が殺したんじゃないの?

―――それは無いと思うけど…。怪しいモンよねー。実際。

―――ちょっと、やめなさいよ。聞こえるって…。

―――どうでもいいわよ。それよりアンタ、指名入ったよ、早く行きな。

―――ああん、もう。ちょっとぐらい乗ってくれたっていいじゃない。


隠れるような女の声が耳を打つ。

それでも私に聞こえるように言っているのか、妙に彼女達は堂々としていた。

乱れた髪も直そうとせずに、女達は噂話に花を咲かす。

それを横目で伺いながら、私は小さく溜め息を吐いた。

――なるほど。そういう話になっているらしい。

どこの輩とも知れない奴が、客を殺した、というものより。

遊女が客を殺した、というものの方が、噂としては華がある。

迷惑な話だった。私は何もしていない。傍観していただけだ。

それでも、遊女に反論する権利などあろう筈もない。

不祥事を起こせば折檻され、上に逆らえば、やはり折檻される。

あの息の詰まる折檻部屋を思い出すだけで、心臓を鷲掴みされたような錯覚を覚えた。

「―――雪、指名が入ったよ」
「―――・・・はい」

後ろから、艶かしい声が背筋を舐める。

1番古株な彼女は、嫌悪を隠す様子もなく顔を歪めた。

誇り高い彼女は、騒ぎを起こした私の事が気に入らなかったのだろう。

鷹のような目をした彼女は、上から私を見下ろして言う。

その目は、まるで潰れた芋虫でも見下すように、冷たい。

温度がない、爬虫類の目だ。

「・・・いい気なモンよねぇ。噂の張本人だってのに、指名なんか貰っちゃって、さぁ?」

嫌悪と憎悪と嫉妬と憤怒が、ない混ぜになった声が、私の鼓膜を揺らす。

煙草の白い煙が彼女の口から吐かれ、私の顔を包んだ。

それは緩やかに上昇し、拡散する。

―――・・・臭い。
―――・・・ケホッ

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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時

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