第4話 ページ6
「君さぁ―――もう、死んじゃいなよ」
「ひぃッ、ひぎぃッ、ひひゃああああ…あッ」
先程と同じく、青年は穏やかな笑顔で、そんな物騒な言葉を吐いた。
それに対し、男は血が吹き出し続ける左手を見て―――後ずさる。
蛙のように潰れた顔を、涙と鼻水と涎で汚しながら無様な声を出した。
「ちがっ…ちがうんだぁぁぁ。俺はざぁッ、頼まれ、でッ」
その男の声は、人の言葉を成していない。
だが問答無用で、青年は彼に傘を突きつけた。
その白い喉から、抑揚のない声の羅列が生産される。
「君が転生卿を乱用している事に興味はないよ。何1つとして、どうでもいい」
声のトーンは先程から変わっていない。にも関わらず、私は息を呑む。
「でも君のお陰で、俺の部下は元老に嫌味言わたんだ」
意味もなく詰めていた空気を吐く。指先が、微かに震え始めた。
「いい加減、自分でつくった借金ぐらい返しなよ。迷惑なんだ」
青年は穏やかに笑っている。だが、その声色に眠る感情は―――。
「給金も俺の団だけ減らされたしさぁ。何より…」
怒りと呼ぶものに、値していた。
「俺の食べる飯の量が、減ったんだよ―――き・み・の・せ・い・で」
そして、その傘は――――男の口内へ、奥深くに捻じ込まれた。
咄嗟に目を瞑る。だが、聴覚は皮肉な事に、機能を果たしてしまった。
濡れた音が響く。それに、血が畳を叩く音が重なった。
鉄の錆びたような匂いが、辺りに充満する。
後には、見事な静寂が訪れた。
「…う、くッ…」
顔を歪め、口を押さえる。喉まで競り上がった胃液を飲み込んだ。
胃の中が掻き回されたようだった。甘い鉄錆の匂いに吐き気が込み上げる。
ビシャッ
青年は傘を振るう。血が飛び、畳に弧が描かれた。
そして、彼はこちらを向く。
青色の瞳が、無感情に、笑う。
「君は―――ここの遊女なんだよネ」
「…」
「まぁ、いいや。とにかく―――」
人差し指を唇に添え、彼は言う。
その声には、やはり抑揚はない。
「―――全部、秘密で宜しく」
貼り付けられただけの笑顔に、感情はない。
意図的に、彼は笑っているようだ。
その言葉の真意を読み取り、私は小さく一言。
その声は客に対しての、あの甘い声だった。
「―――分かりました」
鉄錆の匂いが未だ拭えない、とある一室。
男の死体が転がっている、とある一室。
私はいつもの笑みを浮かべた。
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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
英 - 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時