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第43話 ページ45

一歩一歩踏みしめるように、歩く。
殺す前の、この踊る心を、味わうために。

神威は、通路の真ん中を歩く。
他の天人は、自然と彼を通すべく横へ退く。

殺されないように。

手の骨をバキバキと鳴らす彼には、関わらないのが得策だ。

触らぬ神に祟りなし。

今の神威には、誰も近付かない。



ッチ。

露骨な舌打ちが、怒りの面の下から私に届く。
眉間にしわを寄せ、牙を露わにした怒りの面。

それは、私が読んだ歴史物の挿絵の鬼と、酷似していた。

女鬼は、人を子を孕んだ。
迫害されながら、最後は笑って死んでいったのだ。

「春雨の馬鹿共は、何もわかっちゃいない」

唐突に、彼は言い出した。
苦々しい口調で、彼は不満を吐き捨てる。

「夜兎は戦闘民族。戦いを本業とし、生き甲斐にもしています。前線を任せるなら最適でしょう。肉弾戦も奇襲も、彼ら夜兎は難なくやってのけてきた」

しかし、春雨にとっても私にとっても、重宝するべきなのは、夜兎なんかよりも貴方なんですよ。

「…春雨の馬鹿共は、まだ気づいていないでしょうがね」

「…」

わからない。理解できない。なにがどうなってる。

きりきり。また、妙な音がして面が切り替わる。
笑いの面は、やはり優しさ以外感じられない。

手をとれば、受け止めてくれるような気がする。



自分の部屋からどんどん離れて、殺す相手にはどんどん近づいている。
そこで神威は、ひとつの違和感を持った。

ーーーーなにか、いる。

遊女以外に、妙な気配だ。隙は無いが、見つけさせないようにしているとも、思えなかった。

客人が来ているとの連絡もない。あったところで、阿伏兎が伝えてくれるはずだ。

その妙な気配がするのは、遊女のコンクリート部屋の前だ。
鉄格子を隔てて、彼女と対峙している。

「…?」

神威は首をかしげる。隊員では、無いはずだった。

彼は、強く床を蹴り、走り始めた。



「…時間がもう、ありませんね」

柔らかな物言いは、やはり底抜けに優しい。
慈愛に満ちたその声は、麻薬のようで。

「明日早朝、また来ます」

私の心は、確かに彼に傾き始めていた。



目の前に、3つの面を持つ天人がいた。
笑顔の面と、悲しみの面と、怒りの面。

顔を覆っているのは笑顔の面だ。

神威は、すれ違おうとするその天人の腕を掴む。

遥かに神威より大きいが、夜兎である彼には何の障害にもならなかった。

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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時

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