第36話 ページ38
嗚呼、男よ男。何故お前らは、そうも自分らの威厳を保ちたがり、女の肉に飢えるのか。
嗚呼、女よ女。何故お前らは、そうも金目のものに業が強く、いつまでも人を蹴落とすのか。
嗚呼、人よ人。何故お前らは、そうも自分勝手で、汚く、反吐が出そうなくらいに旨いのだ。
難儀や、難儀。鬼はどこまでも強く、孤独で、気高い。まるで自然のように。
寄り添うこともなく、ぬろりと澱んだこの世界で生きることは、私には難しい。
私は愚かだ。愛しい男の肉を食べた。
それでも、それで生まれた存在は、今私の腹の中に。
鬼はオスを食べて子をつくるのだ。
もっとも、私が食べたのは人だが。
腹を撫でてその子を愛でる。子供は初めてだ。心躍る。
鬼は変わらぬもの。変わってはならぬもの。
そんな常識、破り捨ててやろうではないか。
私の子は、絶対に守る。
◇
パタン。
古い読み物を閉じる。同時に、埃のにおいがした。
ずいぶんと古いものらしい。管理はあまり行き届いていないようだった。
あの後、私達はターミナルへ向かい、宇宙へ出た。
窓を見れば、そこには漆黒の世界に幾多の星が輝いて浮かんでいる。
これで、わたしはもう逃げられないわけだ。
「…はぁ」
コンクリート製の牢屋に、私は押し込められていた。
天井は高く、圧迫感はない。湿度も気温も丁度いい。トイレも布団もあった。
食事も提供してくれる。
書物は、阿伏兎が用意してくれた。軍記物や歴史ばかりだが、それなりに面白かった。
今読んでいるのは、女鬼が人間の男を食べ、子を孕むという内容だった。
この話はずいぶんと続くようで、まだ読みきれていない。
それでも、吉原よりは良かった。何もしなくていいし、横になっていれば時間は過ぎていく。
はじめて安住という言葉を身をもって知った。
だが。
…ガチャン。
壁には鎖が埋め込まれている。
その鎖は床を伝い私の首に繋がっていて、不自由ではないが、嫌だった。
「重たい…」
かすかな不満は、コンクリートに反響して。
誰も耳に入るまでも無いまま、消えていった。
◇
女が私の前で口を開く。私の真上に、女の顔がある。
どうやら、逆さまに彼女は吊るされているようだった。
その首には縄の跡がある。それに加えて、腹が不釣合いに膨張していた。
そういえば、彼女は妊娠していたのだ。
「……今更ですけど、」
言いながら、私は思う。
鷹の目をした彼女は、もう焼かれたのだろうか。
「…貴方の名前なんでしたっけ」
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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
英 - 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時