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第36話 ページ38

嗚呼、男よ男。何故お前らは、そうも自分らの威厳を保ちたがり、女の肉に飢えるのか。

嗚呼、女よ女。何故お前らは、そうも金目のものに業が強く、いつまでも人を蹴落とすのか。

嗚呼、人よ人。何故お前らは、そうも自分勝手で、汚く、反吐が出そうなくらいに旨いのだ。

難儀や、難儀。鬼はどこまでも強く、孤独で、気高い。まるで自然のように。
寄り添うこともなく、ぬろりと澱んだこの世界で生きることは、私には難しい。

私は愚かだ。愛しい男の肉を食べた。

それでも、それで生まれた存在は、今私の腹の中に。

鬼はオスを食べて子をつくるのだ。

もっとも、私が食べたのは人だが。

腹を撫でてその子を愛でる。子供は初めてだ。心躍る。

鬼は変わらぬもの。変わってはならぬもの。

そんな常識、破り捨ててやろうではないか。

私の子は、絶対に守る。



パタン。

古い読み物を閉じる。同時に、埃のにおいがした。

ずいぶんと古いものらしい。管理はあまり行き届いていないようだった。

あの後、私達はターミナルへ向かい、宇宙へ出た。

窓を見れば、そこには漆黒の世界に幾多の星が輝いて浮かんでいる。

これで、わたしはもう逃げられないわけだ。

「…はぁ」

コンクリート製の牢屋に、私は押し込められていた。

天井は高く、圧迫感はない。湿度も気温も丁度いい。トイレも布団もあった。

食事も提供してくれる。

書物は、阿伏兎が用意してくれた。軍記物や歴史ばかりだが、それなりに面白かった。

今読んでいるのは、女鬼が人間の男を食べ、子を孕むという内容だった。

この話はずいぶんと続くようで、まだ読みきれていない。

それでも、吉原よりは良かった。何もしなくていいし、横になっていれば時間は過ぎていく。

はじめて安住という言葉を身をもって知った。

だが。

…ガチャン。

壁には鎖が埋め込まれている。

その鎖は床を伝い私の首に繋がっていて、不自由ではないが、嫌だった。

「重たい…」

かすかな不満は、コンクリートに反響して。

誰も耳に入るまでも無いまま、消えていった。



女が私の前で口を開く。私の真上に、女の顔がある。

どうやら、逆さまに彼女は吊るされているようだった。

その首には縄の跡がある。それに加えて、腹が不釣合いに膨張していた。

そういえば、彼女は妊娠していたのだ。

「……今更ですけど、」

言いながら、私は思う。

鷹の目をした彼女は、もう焼かれたのだろうか。

「…貴方の名前なんでしたっけ」

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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時

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