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第28話 ページ30

最悪だ。最低だ。もうどうにでもなれ。

足の痺れに耐えながら、私は今の状況を大いに嘆く。

「…」

最初は、圧迫感だった。

次に、不安だった。

最終的には、もう諦めたような脱力感が襲ってくる。

目の前に出された湯気のたつ茶に手をつける気にはならなかった。

唾を飲み込む。

口の中が粘ついて仕方なかった。

あの後、何故か私は真選組の屯所へ連行された。

人質の保護なら奉行所などに連れて行く筈だから、あれはただの建前ということか。

もしかしたら、共犯だと思われているかもしれない。

今度会ったらどうしてくれようか。

桂への不満がふつふつと煮えている所で、襖が静かに動く。

質素極まりない、応接室のような部屋に、男の影が落ちた。

畳に男の足裏がつく。ゆっくりと歩むその姿は武士そのものだ。

しかし、顔をあげたら、予想外の穏やかな顔が視界に飛び込む。

「いやーハッハッハ!悪いねぇ、お嬢さん!こぉんなむさ苦しい所つれて来ちゃって!」

耳に優しい声が鼓膜を震わせる。晴れやかな笑顔はこの状況にそぐわない。

それでも、腰に指している刀は重量感を感じさせた。

「…(…ゴリラに似ている)」

その点に関しては拍手を送りたい。

「えーっと、何から話せばいいのか全く分からんなぁ。とりあえず怪我はなかったのかお嬢さん?」

話が一向に進んでいない気がする。

素直に心配してくれているのか、それとも私を探っているのか。

どちらにしろ、この男が嘘をつけるような人物でないことは確かだった。

「…あ、はい。ありません。大丈夫です」
「そうかそうか良かった!あの桂に女性が攫われたって聞いたときにゃ、もう駄目かと思った!」

無駄に声がでかい。

控えめの笑顔を維持しながら、私は感覚の麻痺した足を微かに動かす。

なんでもいいから早く開放してほしい。

内心で深い溜息をついたところで、信じられない言葉が耳をつく。

「・・・本当に、申し訳なかった!」

沈黙。

「…ぇ」
「嫁入り前の娘を危険な目に会わせちっまって、誠に申し訳ない。許してくれ」

ぇ。ぇ。え。ぇ。え。え。

――――――――-え?

さっきまで穏やかだった男の顔は、後悔の表情で潰されていた。

どこか歯を食いしばったかのような、困ったような、複雑なような。

そんな表情をした男に、ただ困惑する。

「―――――あ」ドゴオオオオオオオオオンッ!

突然、白煙が応接室の中に立ち込める。黒い塊のような物も飛んできた。

ただ、私は唖然とする。

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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時

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