第１７話 ページ19
まず始めに青年は急遽、この吉原に乗り込んだ。
主に“転生卿”の密売を行っている春雨として、借金されるのに良い顔はしないのだ。
元老は前々から借金を限界まで溜め込んでいた男を、当然ながら追おうとする。
だが、男はこの吉原に逃げ込んでいるらしく、そうなると下手な動きは出来ない。
それが目的なのかどうかは知らないが、捜索は難航を極める事となった。
そこに、第七師団には好ましくない情報が流れてくる。
―――給金と食糧の、減少だ。
大食いな青年にはそれが耐えられなかったらしく―――結果的には、その男を殺した。
しかしその現場を１人の遊女に目撃されたらしく、噂を広められる前に―――。
春雨は、その遊女を“消してしまおう”という結論に達した。
それは何の比喩でもなく、実際に消えてしまうという事だ。
だが吉原に死体を残せば糸を手繰られ、春雨が関係しているという事がばれるだろう。
醜聞を恐れる春雨には耐え難い事だったのだ。
だから故に、消してしまおう、と。
殺すでもない、“消す”という事。
それは、１つの事実を告げていた。
―――――･･････その遊女を買い、口封じの為に、どこかの銀河に置き去りにする。
そうすれば吉原側は、その遊女は買われたという事になり―――。
春雨側はどこかへ逃げたと言えば何とでもなる。
それが春雨の中で決まった事柄だったのだが―――。
身勝手な団長は、それを何の悪意もなく台無しにした。
遊女を、吉原で殺そうとしたのだ。
それも、客に殺されたという事にして。
阿伏兎は再び重い溜め息を吐く。
この青年に振り回される事を思い出すと、否応なしに頭痛と溜め息が発生するのだ。
徐々に大きくなる、琴の音色と男の笑い声に比例するようにそれは悪化を辿る。
阿伏兎は喋らず、青年も喋らず。
ただの無音が吐き出される座敷に、遊女はいない。
それは、吉原では有り得ない光景だ。
だが、もう誰も何も、何もかもが、動く気配を見せようとしない。
阿伏兎は眼球が入っているであろう壷をチラリと見て―――。
それに関する始末書の内容をどうするか、既に考え始めていた。
◇
ギシッ
足裏の床が軋む。痛む頭を抱えながら、私は吐き気を堪える。
青年が投げていた眼球が脳裏を掠める。未だに壷の中に眼球はあるのだろう。
無駄な思惟だと分かっているが、振り払う事は出来そうになかった。
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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります！ (2015年2月7日 18時) (
レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます！今すぐ取り掛からせていただきますね！ (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます！読んでくださって本当にありがとうございます！ (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです！続編楽しみに待ってます！ (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
英 - 面白かったです！続編楽しみに待っています！ (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：飴崎 | 作成日時：2012年8月6日 14時
