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第11話 ページ13

この吉原で、生きる心地などした事がない。

毎日毎日、淡々と働き、殺されかけ、遊女にも敵意を向けられて。

何が、生きるだ。何が、桃源郷だ。何が、吉原だ。

――――全部、無くなればいい。

解放されないくらいならば、どうだっていいじゃないか。

不自由は、死んでいる事と何が違う。

延々と苦しみを味わい続けて、一体何になると言うのか。

耳元で、誰かが囁いた気がした。

だが、その誰かが何者か分かる直前―――。

水が、顔を強く叩いた。

「・・・ッ!」

水飲み場で、私は顔を洗っていた。

喉は、未だに強い痛みを放っている。

水は既に飲んだが、これ以上改善する可能性はないだろう。

声も多少擦れているが、商売に支障はきたさない程度だ。

「・・・はぁ」

溜め息を吐く。顔についた雫を、タオルで吸収させる。

鏡には、いつも通りの自分が映っていた。

1つ違う事を挙げれば、化粧をしていない事だろうか。

しかし、そこには無視できない異変が映し出されている。

顔は問題ない。正常だ。何も変わらない。

―――――しかし、首が、違った。

首には、痣が跡を残している。それは形を成し、1つの事を告げていた。

私の首には、手の形が残っている。

老人に襲われた時だろう。私は眉根を寄せる。

首に跡がついている遊女など、誰も相手にしないだろう。

悪趣味の客なら幾人は知っているが、大抵そういう類の人間は醜い女を相手にするのだ。

・・・さて、どうするか。

何度も繰り返すが、吉原で客に相手にされない遊女は始末される。

それこそ、問答無用、言い訳無用で、だ。

首の痣が消えるまで何日かかるのだろう。

首の痣が消えるのが早いか、私が始末させられるのが早いか。

そう考えていた刹那―――視界が、暗転した。

「―――・・・ッ!」

声は、出なかった。出せなかったと言ってもいい。

“背後から伸びる手”に、私は引きずり込まれる。

今更気付いたが、私の後ろは倉庫になっていた。

吉原の遊郭は、客を相手にする座敷、遊女達の控え室、その他諸々で構成されている。

精神が可笑しい客―――又は憂さ晴らしを目的とした遊女が隠れていても何ら不思議では、ない。

―――ちっくしょう。

私は心で悪態をつく。その言葉は心臓の中を駆け巡り、爆破でもしそうだった。

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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時

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