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第9話 ページ11

「―――お生憎様、貴方の好みに合わせる気は、微塵もありません」

過ぎた願望を私に押しつけんじゃないですよ。

好みが違うなら他の遊女でも抱いたらどうですか。

貴方にただ従うような遊女は、この吉原には腐るほど居るんですから。

びしり、老人の表情に罅が走った。

致命的な事を言ったが、別に焦る必要はない。



そろそろ、来る頃だからだ。




―――――からり、トンッ

軽い音が響く。老人は明らかな狼狽を見せた。

音源に視線を移動させると、そこには障子の奥に数人、女が佇んでいる。

―――自警団、百華の者だ。

―――彼らの、行動は迅速だ。

「・・・え、あッ・・・・あッ、あっ、あッ?」

―――ばぁっと・えんどー。

声にならない声で、私はふざけた事を呟いた。

理解が追いついていない声を出しながら、老人は硬直する。

さっさと退いて欲しいものだが、何も言わないでおいた。

―――何も言わなくても、この先は分かっていた。

ドドッ

鈍く、くぐもった音が響く。熱い奔流が、頬を叩き、流れ落ちる。

私の首を絞めていた老人の手の甲には、クナイが刺さっていた。

冷え固まった金属は、深く肉を抉っている。

そして、鋭い風切り音が空気を切り裂く。

目の前に、凛とした美貌を持った彼女が、跳んだ。

ひゅっ

「が、ごッ」

妙な悲鳴を老人は上げる。体を『く』の字に曲げながら、彼は壁に勢い良く叩きつけられた。

そのまま、老人は床に倒れ伏す。

蹴られたであろう腹部の痙攣に耐えられなかったのか、彼は派手に嘔吐した。

「―――・・・無事、じゃな?」

慈しみと慈愛と、突き放すような冷酷さが混じった妙な声が、私に話しかける。

彼女は顔の傷を晒すように、真っ直ぐに老人を見据えた。

『十』の形に刻まれた傷は、酷く深い。

彼女は―――月詠は、吐き捨てる。

「―――ぬし、当然、覚悟はあるのだろうな?」
「げほ、ごほ・・・ッ・・・は、ぁ」

気道に酸素が通う。朦朧とした意識も、徐々に回復していく。

だが、酸素不足で霞んだ視界は戻らない。

荒い息を繰り返しながら、私は目を凝らした。

だが聴覚だけで、私は現状を理解する。

文字通り――――声が爆発したのだ。

「あああああああああああああああああああああああああああああッ!」

ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃッッ

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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時

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