変革を遂げる part2 ページ10
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「やっぱりおかしいよ。体調あんまり良くないの?」
彼の顔を覗き込んで、ユウが額に手を当てようとすると、勢いよくその手が払いのけられた。
「触らないで!」
「アイリ……?」
「そんなに気安く触らないでよ!」
初めて聞くアイリの怒声に気圧されて、ユウは一歩退く。そしてユウは驚いた。アイリの瞳は涙に濡れていたから。
「もう放っておいて! いい加減分かってよ、そういう所が嫌いなんだ!」
初めて見るアイリの涙と怒鳴り声に、酷く戸惑う。
「帰りたいんでしょ? だったら帰ればいいじゃないか!」
「落ち着いてよアイリ、わたしが悪かったなら謝るから、まずはちゃんと話して?」
「話したってどうせ分かんないでしょ!」
泣きながらそう言うアイリに諦めきれず、ユウはアイリの腕を掴んだ。涙を零しながらアイリは目を見開いて、しかしその手を振り払うと姿を消した。
彼は――アイリはあんな態度をとるような人間だっただろうか?
一人残されたユウは、訳が分からなかった。
ずっと思い詰めていた様子だったアイリ。その様子は、ユウの心を痛いほどに締め付けていた。
「アイリ……」
ぱたりと、ベッドに倒れ込む。
いつも穏やかに聞こえてくる鳥の囀りや葉擦れの音が、やけに静かに感じた。
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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年2月28日 15時