暴走する車輪 part2 ページ3
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毒となった林檎に体を蝕まれ、血を吸われ続けているユウの顔は青かった。
そして、ユウの血を吸い続けているはずのアイリの顔もまた、血の気をなくしていた。何度も何度も毒を奪って、ユウの青いを通り越して白く変わり始めた肌に迷いながらもゼフィラが止めようとしたその時、ようやくアイリは口を離したのだ。
ユウの傷口を塞いで、立ち上がろうとしたアイリがよろけた。
「お、おい……」
「あのさ」
声をかけたエイスに被せて、アイリが言った。
「その子……連れて、着いて来て、よ……」
「は……？」
アイリの呼吸は荒く、顔色はユウより悪く今にも死にそうだ。キミたちに頼むのは癪だけど、と前置きし、
「今のボク……その子、抱えらんない……から」
それどころか、立つのもやっとと言った風だ。今ならば簡単に殺せるだろうと思うほどに。だが、二人にはそんなことをする気は起きなかった。
なぜなら、アイリのその状態はユウの為で、知らなかったとはいえ彼に林檎を食べさせたのは他でもない二人だ。
エイスは意識のないままのユウを抱え上げる。
そして、アイリが飛んだ先を見上げて、二人は翼を広げた。
飛んだ先には一軒の家があった。アイリがユウを軟禁していた建物だった。
ドアを開けるなりアイリはキッチンへ走り、羽根を纏めて引きちぎった。それを台の上に置くなりユウの元に駆け寄って、ナイフで自分の手首を切る。深い傷から流れる鮮血を口に含んで、アイリはユウの口にそれを注ぎ込んだ。
彼の喉仏が上下するのを確認してもう数度。繰り返す事にユウの顔に血の気が戻ってくる。
今度こそ、アイリは身体を支えきらなかった。硬い床に四肢を放って荒い息を吐きながら、アイリは言う。
「そこに置いてる羽根……を、そこにある道具で調理すればいい。ちゃんと力を付与してあるから……それ、で……助かる、は、ず……」
うつ伏せたまま、アイリはさ迷う視線をユウに向けた。しかしそれも一瞬のことで、彼は瞼を閉じて動かなくなる。
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作者名：ゼファー | 作成日時：2021年2月28日 15時
