アイリヴ part3 ページ10
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対抗策とは林檎だった。罪の果実。しかしそれは彼への対抗策であることには間違いがなく、アリアはそれを『ワクチン』と名付けた。
一見、ただの林檎であったが、天使達は彼の毒に冒された症状から少しずつ解放されて行った。
そしてアリアは彼に挑んだ。全てを掌握し、気に入らない者なら平気で殺してしまう独裁者に。
誰も適わないと思った戦で、彼女は一瞬の隙をついて彼の命を奪った。己の命すらも力に変えることによって、堕天使を粛清したのだ。
そして、粛清された堕天使の名は。
震える声で、ユウは呼んだ。
「アイリヴ」
アイリヴの羽根から変化する肉は、後世でこう呼ばれた。
悪魔の翼。
彼の肉は一見、ただの肉であった。天使が普段の食事で食べるものと遜色ないもので、調理法も変わらなかった。
「あの時は、ミスしたよねえ」
アイリが――アイリヴが言った。「あの天使が美しすぎてさ、見とれちゃったんだよ」
「それで回避が遅れてさぁ。命は助かったけど回復するのに年単位だったし、あの天使死んだって知ってどうでもよくなったんだ」
だから今までここにいたんだよ。無邪気な笑顔でアイリは言った。そしてユウのペリドットのような瞳をすっと覗き込む。
見るなとばかりに顔を背けたユウの頬を掴んで、アイリは優しく唇を重ねてきた。
当然ユウはそれを拒み、いやいやをするように身体を捩った。その動作に再び背中が悲鳴を上げる。……先程の、何倍もの痛みを以て。
「か、っは、ぁ……」
苦悶の声を漏らすユウの状態も無視し、アイリは開いた口に己の舌を捩じ込んで、口内を蹂躙し始める。恐怖に固まり、奥に縮こまった舌を絡めて引きずり出す。昨日の優しさなど感じさせぬ乱暴な動作にユウは震えていることしかできなかった。
やがてユウの体から力が抜け、くたりと凭れかかってくる身体を抱きしめて、アイリは彼に囁いた。
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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 13時