検索窓
今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:10,150 hit

月桂樹の輪 part3 ページ14

.


「『ジブリール』。オマエ、こんな所で何してんの」
 エイスの言い方には棘があった。そして声には怒りが含まれていて、ユウは思わず後退る。
「今天界が戦争で忙しいことくらい、オマエでも知ってるデショ?」
 ゼフィラの方も警戒心を剥き出しにしてこちらを窺っている。当然だ。突然消息不明になり、人間界で暮らしている(ようにしか見えない)ユウは二人にとって不穏分子でしかない。
「ジブリール……」
 黙り込むユウをゼフィラが不安げに呼ぶ。それにも答えぬ彼に、苛立ちを覚えながらエイスがユウを睨んだ。
「おい、何故答えない」
 痺れを切らしたエイスは大股で歩み寄り、腕を掴んだ時だった。
「――っ、ぅああぁぁあああッッ!」
 ユウの口から激しい絶叫が迸り、身体が膝から崩れ落ちる。
「い、嫌だ、やめて! お願いッ、……だから! 嫌だぁっ!」
 地面に伏せた身体を抱いて、身体を震わせる。
 その尋常でない反応に、エイスとゼフィラは目を見開いた。
「やめて、や、やめてくれッ! 嫌だぁあああッッ!!」
 コンクリートの上に転がり、苦しげに声を上げるユウは、涙を零しながら懇願する。
 あの時と同じ感覚。しかし、以前とその強さは段違いであった。軋む身体にゾワリとした感覚が這い回る。
「いやっ、やだ、ッ! こんなの……ッ」
 狂ったように翡翠色の髪を振り乱し、涙を流しながら叫ぶユウの様子に呆然としていた中、先に我に返ったのはエイスだった。
「どうしたジブリール!? ジブリールッ!」
 ユウはあまりに優しすぎて意地っ張りで、何があっても笑顔しか見せなかった。どれだけ酷い怪我をしても、どれだけエイスが冷たい言葉をかけようとも、彼が笑顔を絶やすことはなかった。仲間たちはそんなユウの強さを褒めたたえていたが、エイスにとって素直でない彼が憎らしくて仕方がなかった。それがエイスがユウを嫌う理由だった。
 だから、エイスの前で泣き狂い、身を捩っているユウの姿は衝撃的だった。彼の涙など、見たことがなかった。
 これを異常と言わないで何と言うのか。
「ジブリー……」
「ワタシのモノにー、触らないでくれるかなあ?」
 エイスが屈んで、ユウを助け起こそうと手を伸ばした時、のんびりとした声がそれを阻んだ。
 その場違いな声に二人が振り向くと、銀髪の人物が歩いてくるのが見える。



.

月桂樹の輪 part4→←月桂樹の輪 part2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (61 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:BL , 天使   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。