検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:10,136 hit

月桂樹の輪 part4 ページ15

.


「貴方、誰ですか」
 ゼフィラが誰何の声を上げる。露骨に警戒したその声や視線も気にとめず、ゼフィラに嘲りの表情を向けた。
「だからさぁー、ソレはワタシのモノだって言ってるのぉ。言葉くらい通じてるよねぇ?」
「何ですって?」
「やめろゼフィラ!」
 ゼフィラが低く唸る。翼も出しかねないその雰囲気の彼をエイスが押しとどめた。
 普段とポジションが逆だった。いつもなら頭に血の登ったエイスをゼフィラが窘めるのに。しかし今日は、ゼフィラが感情をあらわにし、エイスが窘めている。
 自分で思っているよりもゼフィラは動揺していることを自覚した。
 エイスが切りつけるように言った。
「オマエ、『アイリヴ』だな?」
「は……?」
 彼の言葉に、絶句する。ゼフィラはたとえ親友のものであろうともその発言を信じられず、目の前の男とエイスを交互に見た。
 最凶の堕天使であり、最終的に粛清されたはずの熾天使(ウリエル)――アイリヴ。
 ゼフィラはもっと凶悪そうなイメージしか持っていなかったし、眼前に立つ銀髪の男は美しい、あるいは清らかとさえ思える容姿を持っていた。
 ――これが、悪逆非道のアイリヴなのか?
 ゼフィラの困惑した表情にエイスは言う。
「容姿は女のように美しいが、惑わされるなよ。確かにコイツの文献は処分され、半ば物語のようになっているが……間違いない」
 エイスの言葉通り、『アイリヴ』に関する資料は全て抹消されていた。その姿、経歴、功績でさえも。彼とて知ろうと思って知った訳ではなく、趣味として古い文献を読み漁っている際偶然、見つけたものなのだが。
 ゆえにエイスは覚えていたし、ゼフィラの戸惑いも理解出来る。
 目の前の彼は、ふわりと笑む。
「そうだよぉ。今は、アイリって名前だけどぉ」
 可愛い――確かにその所作は、冷たい印象を与える容姿に反して、可愛いものだった。しかし彼は『アイリヴ』なのだ。その可愛らしさの裏には漆黒の魔性が潜んでいる。
 ユウの悶え苦しむ姿は、『アイリヴ』のもつ力と一致する。つまりそれは。


.

月桂樹の輪 part5→←月桂樹の輪 part3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (61 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:BL , 天使   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。