【オリジナル/BL】悪魔の翼 (ページ13)

今日:3 hit、昨日:7 hit、合計:10,064 hit

月桂樹の輪 part2 ページ13

.

　全身に這い回る恐ろしい感覚に蹲ったユウに驚く周囲の人々。
　肩に触れた声に、みっともない声をあげそうになった自分。
　羞恥と感覚を必死に耐えているうちに、アイリはいつも通りの笑顔で迎えに来てくれた。しかしその目はどす黒い感情に塗れていて、この異変が彼によるものだと理解した。
　アイリは相当怒っていたのか、声を出すまいと必死に堪えるユウを面白そうに眺め、そして相当な時間をかけて家へと帰った。その時には既にユウの体力は尽きていて、ベッドに下ろされたことにすら気付かなかった。そうして、仕置きとばかりに乱暴に抱かれて啼かされた。
　さらに失神する度に手酷くおかされ、意識が戻ればユウが一番嫌がるように抱き潰された。最終的には狂いかけて、それでようやくアイリは許してくれたのである。許してくれるまでの一週間は辛かった。痛みであればまだマシだっただろうに、快楽だけでなく『あの感覚』まで叩き込まれたら、いくらなんでも無理である。
　何度ごめんなさい、許してください、もうやめてくれと懇願したか分からない。
　アイリの話によれば、彼の力は既に全回復しているらしい。アリアと戦った頃と遜色のないレベルになっているということで、その気になれば天界を半分消し飛ばせると平然と言った。
　だからこそ帰れない。逃げられない。逃げればきっと、アイリは見せしめに天界を破壊するだろう。自分ならともかく、仲間が傷つくことは絶対に嫌だ。
　ユウはまた、溜め息をついた。
　低気圧のせいか、身体の節々が鈍く痛む。散歩の帰り道、歩く度に身体が軋んだ。寝ている方が楽なのは分かっているが、それでも外出することを選んだのはユウ自身である。
　少しでも自分の時間が欲しかったのだ。
　外出したいと言ったユウにアイリは素っ気なく了承し、この服を渡してきた。
　――帰りたくない。
　緩慢な歩みを止めたユウは、不意に人の気配を感じ取って振り向いた。
　そして、その先に立っている者を認識して動揺する。
「おい」
　声をかけてきたのは、アイスブルーの髪の小柄な少年。その隣には、濡れ羽色の髪に月長石(ムーンストーン)の瞳を持つ長身の姿がある。二人共、特に小柄な彼は、何故か自分のことをライバル視して時折突っかかってくるのだ。
　剣呑な光を宿したサファイアのような瞳に気圧される。それぞれ小柄な方がエイス、長身の方がゼフィラといった二人の智天使(ケルビム)は、ユウに向かって歩いてきた。

.