来世で愛を【我妻善逸】

20 ページ22

「チュン太郎ッおま、お前！タイミング考えろよ！今じゃない！どう考えても今じゃないでしょうが！！」

俺の怒りに怯える素振りもなく、チュンチュン鳴く雀に頭を抱える。

「あぁもう…ごめんAちゃん。俺そろそろ行かなきゃ」

「謝らないで下さい。鬼殺隊のあなたの助けを待ってる人はきっとたくさん居ますから、ね」

「うん、ありがとう。なるべく早く片付けてくる。だから、絶対絶対明日こそAちゃんの気持ち教えてよ、嬉しい返事を期待してるから！」

「ふふ、分かりました。明日は善逸さんの大好きな甘いもの、そうですねぇ、くっきーを焼いて帰りを待っていますね」

「それ最高！！じゃあ、また明日」

「はい、善逸さんもどうかご無事で」

ぎゅっと力いっぱい抱きしめて、愛おしい君の笑顔に後ろ髪を引かれながら靴紐を締め直した。








鬼が出たのはその夜だった









馬鹿みたいに心臓が五月蝿い



両四肢は抑えがきかないほどに震えてる



炭治郎の鴉に導かれ走れば走るほど嫌な汗が背中を伝う


「善逸？どうしたんだ顔が真っ青だ」

「ハッ、どうせいつもみたいにビビってんだろ」

「うるせぇ！俺は先に行く！！」



二人を置いてとにかく足を動かす




立ち止まるな



速く



速く


もっと速く


走れ


鬼の音に混じって


恐怖に支配されたAちゃんの音が鼓膜を叩く


「くそっ、間に合え！！」



雑踏の中で鬼に追われるAちゃんが視界の隅に映り込んだ



「ッAちゃん！！！」
　


俺の声が届いた君がこちらを振り向いた瞬間







鬼の爪が君の白い喉をつらぬいた








昔から俺が一番自分のことが好きじゃなかった



弱いし



怖がりだし



怯えるし



すぐ泣くし



でも、今ほど自分が大嫌いだと思ったことはない



"明日"がくる保証なんて何一つないこと俺が一番分かってたのに



ドサァッと土ぼこりをあげて鬼の首が地に落ちる


嗚呼、俺でも鬼を倒せるんだな


でも、倒したって君がかえってくるわけじゃない




ーーー鬼殺隊のあなたの助けを待ってる人、たくさん居るはずですから



ごめん



ごめん



ごめん…





腕の中でAちゃんの音が消えていく





「う゛あ゛あああああ！！！！」


　


慟哭がただただ雑踏に響き渡った

21→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す